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人の生命に危害を加える罪
- 殺人罪(199条)
- 人を死なせることを目標に死なせるような行為をして結局死なせた場合に成立します。逆に言うと死なせるつもりがなければ殺人罪は絶対に成立しません。その意味が「殺した」という言葉に含まれています。
未遂罪あり。
死刑,無期懲役,5年以上の有期懲役。
(2005.1.1改訂)
- 殺人予備罪(201条)
- 未遂罪にならなくとも殺人罪の準備をすると成立。
2年以下の懲役(免除可)
- 自殺関与罪・同意殺人罪(202条)
- 自分自身を対象にした殺人が自殺な訳ですが,自殺を教唆したり,自殺の手助けをした場合に成立するのが自殺関与罪です。また本人に頼まれてその本人を殺したり,本人の承諾の下に本人を殺したりするのが同意殺人罪です。森鴎外の「高瀬舟」に登場するのは今で言うなら同意殺人罪になります。同意殺人罪は嘱託殺人罪と言われることがあります。
未遂罪あり。
6か月以上7年以下の懲役。
- 傷害致死罪(205条)
- 殺人について故意がないが,暴行か傷害について故意がありその結果死なせた場合に成立する結果的加重犯です。
3年以上の有期懲役。
参照 傷害罪
(2005.1.1改訂)
- 過失致死罪(210条)
- 過失によって死なせた場合に成立します。傷害罪における傷害致死罪のように故意犯の結果的加重犯が成立する場合には,過失致死罪は成立しません。
50万円以下の罰金
- 業務上過失致死罪(211条前段)・重過失致死罪(211条後段)
- 過失致死罪のうち,業務上要求される注意をはらわなかった場合に成立するのが業務上過失致死罪,過失が特に重大な場合に成立するのが重過失致死罪です。ここで言う業務は必ずしも仕事とか営利目的ということを意味しません。反復継続性があって,他人に危害を与える類のものであれば足ります。
5年以下の懲役,5年以下の禁錮,50万円以下の罰金
なお,以前は,自動車を運転した結果人を死なせたり傷つけた場合には,業務上過失傷害・致死罪,自転車運転過失傷害・致死罪,危険運転致傷・致傷罪などを適用してきましたが,平成26年5月20日施行の「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」が適用されることとなりました。
その概要はこちら。
一方,道路交通法上は「軽車両」とされる自転車については,業務上過失致死罪も成立しないとされています。自転車程度では「(定型的に)他人に危害を与えるもの」とは評価されていないのです。
- 堕胎罪(212条)
- 妊娠中の女性が子供をおろした時に成立します。
一般的に中絶手術が行われているのは,形式的には母体保護法14条による「妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」に該当するところからであって,こういう正当化の定めが別途ない限り中絶は堕胎罪となります。
この罪は「母の健康を損ねることの防止」「子の生命の保護」の双方から説明可能で,実際何を守るべき犯罪なのか争いのあるところですが,ここでは生命が奪われることに着目してこの項に入れておきました。
1年以下の懲役
- 同意堕胎罪(213条前段)
- 妊娠中の女性からの依頼やその同意のもとに子供をおろす行為をした者に対し成立します。
2年以下の懲役
- 同意堕胎致死罪(213条後段)
- 同意堕胎罪の結果妊娠中の女性を死なせた場合に成立する結果的加重犯です。
3か月以上5年以下の懲役
- 業務上堕胎罪(214条前段)
- 同意堕胎罪を犯した者が「医師,助産婦,薬剤師,医薬品販売業者」である場合に刑が重くなる不真正身分犯です。
3か月以上5年以下の懲役
- 業務上堕胎致死罪(214条後段)
- 業務上堕胎罪の結果妊娠中の女性を死なせた場合に成立する結果的加重犯です。
6か月以上7年以下の懲役
- 不同意堕胎罪(215条前段)
- 妊娠中の女性からの依頼や同意がないのに子供をおろす行為をした者に対し成立します。
6か月以上7年以下の懲役
未遂処罰あり。
- 不同意堕胎致死罪(216条)
- 不同意堕胎罪の結果妊娠中の女性を死なせた場合に成立する結果的加重犯です。
6か月以上10年以下の懲役
- 遺棄致死罪(219条)
- 老年,幼年,身体障害,疾病のために扶助を必要とする者を,どこかへ強制的に移動させることで,その者の生命身体に危険を発生させ,それゆえに死なせた場合に成立します。
2年以上の有期懲役
参照 遺棄罪
- 保護責任者遺棄致死罪(219条)
- 遺棄致死罪のうち,その被害者を扶助しなければならない義務を持つ者が遺棄致死罪を犯すか,置き去りなど必要な扶助を与えなかったことにより死なせた場合に刑が重くなる不真正身分犯であり結果的加重犯です。
2年以上の有期懲役
参照 保護責任者遺棄罪
- 逮捕監禁致死罪(221条)
- 逮捕や監禁を犯して死なせた場合に成立する結果的加重犯です。
2年以上の有期懲役
参照 逮捕監禁罪
- 強盗致死罪(240条)
- 強盗犯が死なせた場合に成立する結果的加重犯です。
死刑,無期懲役
未遂処罰あり
参照 強盗罪
- 強盗強姦致死罪(241条)
- 強盗が強姦を行いもって死なせた場合に成立する結果的加重犯です。
死刑,無期懲役
未遂処罰あり
参照 強盗強姦罪
- 建造物損壊致死罪(260条)
- 他人の建造物や船舶を破壊しもって死なせた場合に成立する結果的加重犯です。
2年以上の有期懲役
参照 建造物損壊罪
- 集団強姦等致傷罪(181条の3)
- 集団強姦等の結果傷つけた場合に成立する結果的加重犯です。
無期懲役,6年以上の有期懲役
(2005.1.1改訂)
- 往来妨害致死罪(124条2項)
- 道路や交通に使う河川その他の水路を壊したりふさいだりすることで通れなくし,そのことで人を死なせた場合に成立する結果的加重犯です。
2年以上の有期懲役
参照 往来妨害罪
- ガス漏出等致死罪(118条2項)
- ガス・電気・蒸気の漏出・流出・遮断によって人の生命・身体・財産に危険を発生させ,そのことで人を死なせた場合に成立する結果的加重犯です。
2年以上の有期懲役
参照 ガス漏出等罪
- 往来危険致死罪(126条3項)
- 鉄道自体を破壊したり鉄道信号などを破壊したりして汽車電車の通行に危険を発生させたり,灯台や浮標などを破壊することなどで船舶の航行に危険を発生させて汽車電車船舶の転覆破壊沈没をまねき,もしくは直接汽車電車船舶の転覆破壊沈没をまねいて,人を死なせた場合に成立する結果的加重犯です。
死刑,無期懲役
参照 往来危険罪・汽車転覆罪・艦船転覆罪
- 浄水汚染致死罪・水道汚染致死罪・浄水毒物等混入致死罪(145条)
- 浄水や水道の水源,水道水を汚染したり水道以外でも浄水に毒物やその他健康を害する物を入れるなどしてその結果人を死なせた場合に成立する結果的加重犯です。
2年以上の有期懲役
参照 浄水汚染罪・水道汚染罪・浄水毒物等混入罪
- 水道毒物混入致死罪(146条)
- 水道に毒物やその他健康を害する物を入れるなどしてその結果人を死なせた場合に成立する結果的加重犯です。
死刑,無期懲役,5年以上の懲役
参照 水道毒物混入罪
- 強制わいせつ等致死傷罪(181条1項〜3項)
- 参照
強制わいせつ致死傷罪(181条1項)
強姦致死傷罪(181条2項)
集団強姦等致死傷罪(181条3項)
- 特別公務員職権濫用致死罪(196条)
- 裁判・検察・警察の職務を行ったりそれを補助する者が,その職務を行うにあたって,被告人・被疑者・その他の者を逮捕,監禁しその結果死なせた場合に成立する不真正身分犯であり結果的加重犯です。
2年以上の有期懲役
参照 特別公務員職権濫用罪
- 特別公務員暴行陵虐致死罪(196条)
- 裁判・検察・警察の職務を行ったりそれを補助する者が,その職務を行うにあたって,被告人・被疑者・その他の者に対し暴行・陵辱・加虐の行為を行い,その結果死なせた場合に成立する不真正身分犯であり結果的加重犯です。また法令により拘禁された者を看守しもしくは護送する者が,その拘禁された者に対し同じようにした結果死なせた場合も成立します。
2年以上の有期懲役
参照 特別公務員暴行陵虐罪
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