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他人の犠牲の上に自己もしくは誰かの財産的利益を得る罪

遺失物等横領罪(254条)
 他人の占有を離れた他人の物を自分の物であるかのようにふるまった場合に成立します。典型的な例としては「自分で使う」「他人に貸す、渡す、売る」などでしょう。
 刑法各論的には、「他人の占有を侵害する行為がない」「他人に対してなんらかの行為をした訳ではない」という点において、他人の財産を他人の犠牲の下で自分の財産にする類の犯罪の中ではもっとも基本的な犯罪という位置づけがなされます。迷った時には遺失物等横領罪を基本に違いを考えるといいでしょう。
 1年以下の懲役、10万円以下の罰金。
 なお配偶者、直系血族、同居している(その他の)親族の間での犯罪であれば刑を免除し、同居していない(その他の)親族(配偶者や直系血族はのぞかれる訳です)の間での犯罪であれば、被害者の告訴がなければ裁判ができないという「親族相盗例」というルールがあります。
横領罪(252条)
 自分が占有している他人の物をあたかも自分の物であるかのようにふるまった場合に成立します。遺失物等横領罪との違いは「自分の占有になっているかどうか」です。
 5年以下の懲役。
 親族相盗例あり。
業務上横領罪(253条)
 業務として占有している物について横領を行った場合に成立します。この場合の業務は職業・職務の類です。
 10年以下の懲役。
 親族相盗例あり。
詐欺罪(246条)
 「他人をだます行為を行った結果相手がだまされ」「だまされた結果として財物を交付させ、もしくは利益を与えた」という2段階を経て、相手の損害の下に自分の利益をはかった場合に成立します。財物の移転を目的とする場合が246条1項であることから「1項詐欺」、利益の享受を目的とする場合が「2項詐欺」と呼ばれることがあります。例えば食事付の旅館のように宿泊サービスについて2項詐欺、食事の提供が1項詐欺で、同時に行われる場合がありますが、その場合は全体として246条の詐欺という扱いになります。「だまされた結果として財物を交付させ、もしくは利益を与えた」ということが必要になりますので相手がだまされない場合(例えばかわいそうに思ってお金をあげた)やだまされなくても財物交付利益提供におよんだであろう場合には詐欺罪は成立しません。詐欺未遂罪になります。まただまされるのは人間に限定されますので、機械を相手にだましたという評価はせず、詐欺罪は議論しないことになります。(おおむね窃盗罪を検討。)また、だます行為自体を処罰の対象としている訳ではありませんから、「他者の犠牲の上に自分の財産上の利益をはかる」とは言い難いものについては詐欺罪にはなりません。
 遺失物等横領罪との違いは、第1に財物の占有の移転だけではなく、利益・サービスの提供についても対象としていること、第2に財物の占有の移転については、他人の占有を自分の占有にする際、だますという行為が入っていることです。そして、任意・平穏な形で占有の移転が行われていることが特徴です。
 10年以下の懲役。
 未遂処罰あり。
 親族相盗例あり。
準詐欺罪(248条)
 通常の詐欺罪は「他人をだます行為を行った結果相手がだまされ」「だまされた結果として財物を交付させ、もしくは利益を与えた」という因果関係を要求するのですが、相手が未成年者であるとか心神耗弱であるということで「だまされたその結果」というのではなく「相手がまともな状態ではないのに乗じて」同じ結果となった場合に成立します。
 10年以下の懲役。
 未遂処罰あり。
 親族相盗例あり。
電子計算機使用詐欺罪(246条の2)
 コンピューターに虚偽・不正な情報を与え、その結果財産的な利益を得た(誰かに得させた)場合に成立します。普通の詐欺罪が成立する場合を除きます。これはコンピューターはだまされないということになるとコンピューターに虚偽・不正な情報を与えただけでは詐欺行為とは言い難いし、与えられた虚偽・不正な情報をもとに事務処理をする人は、必ずしもだまされてそのような処理をしている訳ではないので詐欺罪の成立が困難な場合が出てくるため、行為を全体として観察して詐欺罪類似のものとして処罰することにしたものです。
 10年以下の懲役。
 未遂処罰あり。
 親族相盗例あり。
恐喝罪(249条)
 相手に何らかの害悪の告知をして財物を交付させたり(1項)、財産上の利益を自ら得るか第3者に得させた場合(2項)に成立します。
 遺失物等横領罪との違いは、詐欺と同様利益・サービスについても対象としていること、他人の占有を自分の占有に移すことにあり、詐欺と違って「害悪の告知」という脅迫の手段を使っている以上任意・平穏とは言い難いですが、一応本人の意思によって占有の移転が行われているという特徴があります。ある意味脅迫強要のうち財物移転・財産的利益の提供にいたったものを処罰すると考えてもいいでしょう。
 10年以下の懲役。
 未遂処罰あり。
 親族相盗例あり。
窃盗罪(235条)
 他人の(占有する)財物を盗んだ時に成立します。
 (占有する)とカッコ書きにした点ですが、昔から窃盗罪の性質として「所有権侵害を処罰するのか占有権侵害を処罰するのか」という議論があったところ、一応占有権侵害を処罰するものと考えていいでしょう。したがって、たとえ自分の所有物であっても他人の占有が認められる場合(例 自分の名前入りの本を盗まれた後で、町の古本屋で発見したというので勝手に持ってきてしまう)も窃盗罪は成立します。
 また一時的な使用をした後で返すつもりであった場合についても議論となっていますが、判例では自動車を乗り回すための4時間の使用で窃盗罪を成立させていますので、仮に一時使用は窃盗罪にならないとしても(そういう判例は確かにあるんですが)その範囲はきわめて限定的でしょう。
 遺失物等横領罪との違いは、他人の占有を排除している点であり、その他の横領罪との違いは、自分の占有に移すことを相手の知らない内に行っている点です。相手が占有を移転する行為をしていない点で詐欺や恐喝と異なります。
 10年以下の懲役。
 未遂処罰あり。
 親族相盗例あり。
(2004.10.18改訂)
強盗罪(236条)・昏睡強盗罪(239条)・事後強盗罪(238条)
 暴行・脅迫によって他人の財物を奪ったり(236条1項)、財産上の利益を自ら得たり、誰かに得させた場合(236条2項)に成立します。
 遺失物等横領罪との違いは、詐欺罪と同様財産上の利益・サービスも対象としていること、また他人の財物の占有の移転に際し、相手の反抗の意思を抑圧していわば実力の下に移転していることです。この点が恐怖からとはいえ、一応被害者の意思で占有を移転している恐喝との違いです。
 暴行・脅迫ではなく、酒やその他の薬物等で意識がはっきりしない状態に追い込んで(結果的に反抗の意思を抑圧している点では同じ)実力の下に移転させればこれまた強盗罪になります。(239条)
 さらに手順が前後した場合、すなわち窃盗をした後に、「窃盗が見つかって逮捕されそうになり、逮捕されないようにするため」「窃盗が見つかって取り返されそうになったので、取り返されないようにするため」「窃盗の証拠を消すため」に暴行脅迫をしても強盗になります(238条)。典型的な例は万引きが見つかって逃げようとする時に暴れると強盗罪になります。
 5年以上の有期懲役。
 未遂処罰あり。
 致死罪致傷罪あり。
強盗予備罪(237条)
 強盗の未遂にすらならないことでも強盗の準備をすれば成立します。
 2年以下の懲役。
強盗強姦罪(241条前段)
 強盗犯が強姦をした場合に成立します。
 無期懲役、7年以上の懲役。
 未遂処罰あり。
 致死罪あり。
不動産侵奪罪(235条の2)
 いわば不動産の窃盗罪です。他人の不動産に対し、他人の意思に反し、他人の事実上の占有を排除し、自己の支配下においた場合に成立します。
 10年以下の懲役。
 未遂処罰あり。
 親族相盗例あり。
盗品等譲受罪(256条1項)
 財産に対する罪(おおむね「他人の犠牲の上に自己もしくは誰かの財産的利益を得る罪」と考えていいでしょう。)によって得た財物をそうと知りながら無償で譲り受けた場合に成立します。
 3年以下の懲役。
 配偶者・直系血族及びその配偶者・(その他の)同居の親族及びその配偶者との間では刑が免除されます。親族相盗例と微妙に違うのは「直系血族・その他の同居の親族」の他それらの配偶者も含まれていること、これらの親族には含まれない親族についての親告罪規定が存在しないことです。
盗品等運搬・保管・有償譲受罪(256条2項)
 財産に対する罪(おおむね「他人の犠牲の上に自己もしくは誰かの財産的利益を得る罪」と考えていいでしょう。)によって得た財物をそうと知りながら運んだり、保管したり、有償で譲り受けた場合に成立します。
 3年以下の懲役。
 親族相盗例の扱いについては盗品等譲受罪の場合と同じ。
(2004.10.18改訂)

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