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人の自由に危害を加える罪
- 逮捕罪・監禁罪(220条)
- 他人の自由を奪って逮捕監禁した時に成立します。逮捕と監禁とは自由を束縛する点において共通しており,その拘束時間がきわめて短い場合に逮捕,それを超えると監禁とされていますが,この差は相対的なものです。ですから無理やりつかまえてそのまま逃がさないでおくパターンだと「逮捕監禁罪」と呼ばれることもあります。
3月以上7年以下の懲役。
致傷罪・致死罪あり。
ちなみに刑罰が割と軽めなのは長期間の監禁というものを想定していない,むしろその種のものは誘拐ではないかと考えられていたことによります。
- 脅迫罪(222条)
- 本人もしくはその親族の生命・身体・自由・名誉・財産に害を加えることを告知して脅迫した場合に成立します。
2年以下の懲役,30万円以下の罰金。
- 強要罪(223条)
- 2つのパターンがあります。1つは脅迫罪になるようなことをして,その本人に義務のないことをさせるか,その本人の権利の行使をさせなかった場合,もう1つは本人に対し暴行を行って,その本人に義務のないことをさせるか,その本人の権利の行使をさせなかった場合に成立します。
3年以下の懲役。
未遂処罰あり。
- 未成年者略取罪・未成年者誘拐罪(224条)
- 「略取」というのは暴行・脅迫によって自分の実力支配下に移すこと,「誘拐」というのは詐欺・欺罔・誘惑によって自分の実力支配下に移すことを言います。対象が未成年者である場合に成立します。
3月以上7年以下の懲役。
未遂処罰あり。
- 営利目的等略取罪・営利目的等誘拐罪(225条)
- 「財産上の利益を得るため」「わいせつ目的のため」「結婚目的のため」「生命・身体に害を加えるため」に略取・誘拐を行った場合に成立します。
1年以上10年以下の懲役。
未遂処罰あり。
- 身の代金目的略取罪・身の代金目的誘拐罪(225条の2)
- 近親者やその者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて財物を交付させる目的(身の代金目的)で,略取・誘拐した場合に成立します(1項)。また手順が逆になった場合,すなわち略取・誘拐の後に財物を交付させる意思をもって実際に交付させたり,交付を要求した場合にも成立します。(2項)
無期懲役,3年以上の懲役。
1項について未遂処罰あり。(2項については未遂罪が考えにくい。)
なお,起訴前に安全な場所で解放した場合には,刑を減軽します。(228条の2)
- 所在国外移送目的略取罪・所在国外移送目的誘拐罪(226条)
- 元々は「日本国外に」という限定付きでしたが,現行法では,「ある国から別の国へ」移動させるものがすべて含まれることとなりました。このような移動をさせる目的で,略取・誘拐した場合に成立します。
2年以上の有期懲役。
未遂処罰あり。
- 人身売買罪(226条の2)
- いわゆる人身売買は売った方も買った方も処罰されます。
基本形としては1項で,3か月以上5年以下の懲役,未遂処罰あり。
未成年者の場合が2項で,3か月以上7年以下の懲役,未遂処罰あり。
「財産上の利益を得るため」「わいせつ目的のため」「結婚目的のため」「生命・身体に害を加えるため」の場合が3項で,1年以上10年以下の懲役,未遂処罰あり。
226条に対応する「ある国から別の国へ」移動目的の場合が5項で,2年以上の有期懲役,未遂処罰あり。
- 被略取者等所在国外移送罪(226条の3)
- 略取・誘拐・人身売買の対象となった者を「ある国から別の国へ」移動させることで成立しなす。
2年以上の有期懲役。
未遂処罰あり。
- 被略取者引渡し等罪(227条)
- 基本的には224条から226条の3までの略取・誘拐・人身売買罪を手助けするという幇助犯的な性格をもつ犯罪です。これら条文がなくても幇助犯で処罰することが可能といえば可能なのですが,ある種の形態のものについて明文で定めたものです。
(1)255条の2第1項以外の各罪の幇助目的の引渡・収受(受取)・蔵匿(かくまい)・隠避(移動)(227条1項)
3か月以上5年以下の懲役
未遂処罰あり。
(2)225条の2第1項の幇助目的の引渡・収受(受取)・蔵匿(かくまい)・隠避(移動)(227条2項)
1年以上10年以下の懲役。
解放軽減あり。
未遂処罰あり。
(3)営利目的・わいせつ目的の収受(227条3項)
正犯を幇助する目的ではなく自分自身が営利目的・わいせつ目的をもって収受した場合に成立します。
6か月以上7年以下の懲役。
未遂処罰あり。
(4)身の代金目的の収受・収受後の身の代金要求・受取(227条4項)
正犯を幇助する目的ではなく自分自身が身の代金目的をもって収受した場合(225条の2第1項に類似したパターン 227条4項前段),さらには手順が逆になった場合である,収受後に身の代金目的をもって身の代金を要求したり受け取った場合(225条の2第2項に類似したパターン 227条4項後段)に成立します。
2年以上の有期懲役。
解放減軽あり。
前段について未遂処罰あり。(後段のパターンは未遂が考えにくい。)
- 身の代金目的略取等予備罪(228条の3)
- 225条の2の犯罪については,未遂罪にすらならなくても犯罪の準備をしただけで予備罪が成立します。
2年以下の懲役。
ただし未遂罪になる前に自首した場合には,必ず刑を軽減するか免除しなければなりません。
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