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刑事手続法

 さて刑事訴訟手続やその準備のための手続を取り扱うのが刑事手続法の分野であり、その中核をなすのが刑事訴訟法です。
 刑事手続法をつらぬく原理が「法定手続の保障」です。その前提には「真の犯罪者を必ず捕まえ、犯罪者ではない者を絶対に手続にのせない……ってことは不可能」という発想に立っています。ですから「犯罪者ではない者を処罰することはないようにしよう」というのを最優先の目標として、刑事手続法は組み立てられています。そしてこの目標を実現させるために、法律をきちんと定め、その法律による手続をふむこととし、その法律による手続が守られなかった場合には、守られなかったことを理由に、刑事手続から解放しようとするのが法定手続の保障です。
 さて刑事法が基本的に権力と市民との間を規律する法であることと、刑罰を科す手続を遂行することが基本的に捜査機関である警察と訴追機関である検察庁に独占されていることから、市民が刑罰権の発動を裁判所に直接求めることはできないし、警察や検察庁を市民が拘束することはできないことは理解しておく必要があります。
 次にいわゆる逮捕や勾留などの身柄拘束の手続が、制裁を目的とするものではなく、後に続く刑事裁判のための証拠収集・保全のための手続であることを理解しておく必要があります。
 そして刑事訴訟は、このようにして証拠を収集した警察が検察庁に対し訴追するよう求め、その求めを受けた検察が、必要とあらば裁判所に対し(いわば民事訴訟における原告であるかのように)裁判の実施を求めると同時に、有罪判決の獲得を目指して犯罪の証明を行うというのが基本型です。裁判所はあくまでその犯罪の証明がされたかどうかを判断するのが仕事です。その判断基準は、合理的な疑いを持つことができないほどに検察官が証明したか否かです。弁護人は、検察官の証明に対し、その証明が妥当なものなのか監視し、さらには検察官が指摘しないorできないような被告人に有利な事情を指摘することがメインの仕事です。


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