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憲法
憲法は法律の中でも特殊な地位を占めています。
法律は国会によって定められますが、日本国憲法は国会によって定められた訳でもまた国会によって改正されるものではありません。
法律は市民対市民もしくは市民対権力を規律するものですが、憲法はもっぱら権力を規律するものです。
こういう特殊な地位にあるということはぜひ理解してください。もっとも民事法の原理などは直ちには適用にならないものの、憲法を解釈する手法は他の法律と変わらないことも覚えておく必要があります。
さて近代的意味における憲法は、権力が市民の権利を侵すことのないよう、人権規定によって権力がこれを侵さないよう定め、それを保障するために立法・行政・司法の各機関を分立させるようにした点にその特色を持ちます。
したがって市民対市民の問題に憲法を持ち出したり、市民対権力の問題に市民の権利を制限する理由として憲法を持ち出すのは原理的におかしいのです。実際、権力が憲法に反して行ったことは効力を持ちませんが、市民が憲法に反した場合の効力は憲法に記述されていません。実際憲法は最高法規と呼ばれますが、この規定は「契約」を対象外としております。
もっとも日本国憲法においては、基本的人権の尊重をうたっており、また憲法以前に人権が存在して、その一部を憲法が保障しているという発想なので、人権を侵害するような行為については、その効力を否定し、裁判所が助けないということになっていますが、これはあくまで憲法で保障されている類の人権は、民法90条における「公の秩序や善良な風俗」に入るので、この人権を侵害することが、民法90条違反として効力を失うという発想です。
そしてこういう発想をとるゆえんのものは、「相手にも人権がある」ということに尽きるでしょう。権力を規律するという点では権力自体に人権が認められない以上、市民の人権を侵害したか否かだけで判断していいですし、権力を厳しくしばることもなんら問題はありません。しかし、相手にも人権があるという市民相互間の問題の場合については、人権のない権力の場合の議論は通用しません。ある人の人権を保護することが別の人の人権を侵害することがあるからです。そうすると人権相互の利害の調整という観点が出てくるので、権力が行えば憲法違反のなるような行為でも、市民が行えば憲法違反となる訳ではなく、結果憲法学だけでは一筋縄にはいかないのです。
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