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国際法

 さて最後は国際法です。
 私は国際法から法律学に入っていったのですが、これはやはり少数派です。国際法をよりよく学ぶためには、国内法の体系をひととおりおさえておいて、かつ国際法独自の発想をおさえる必要があるからです。  もっとも最初に国際法に触れたとしても国際法を丁寧にやっていけば、後で国内法を学ぶ時に、国内法だけやっていたのでは見えない部分が浮き上がって見えるようになるので、国際法から入るのもそれほど外れた方法論ではないと、個人的には思っています。
 さて国内法を学ぶ上で関係のある国際法についての最小限の基礎知識を紹介しておきます。

1 国際法は国家と国家の間を規律する法律である。
 端的に言えば国際社会における法が国際法なのですが、国際社会はいまだ基本的には国家及び国際機関を単位に組織されています。個人や(国家や国際機関とは言えない)集団を規律の対象にすることもありますが、基本的には国家及び国際機関を規律の対象にするものですし、国家及び国家機関が積極的に規律の形成に与かることはあっても個人や集団が積極的に規律の形成に与かることはなかなかありません。
 国際法には個人の義務を定めたかに見える条項を含む条約もありますが、これが本当に、違反した場合に個人の責任を追及するものかどうかは、必ず検討しなければなりませんし、その多くは、個人にそういうことをさせないようにする国家の義務を定めたもので、その違反も国家の義務違反となるものなのです。

2 国際法には国内法の原理が使えない場合がある。
 国際法も最初は国内法との類推で語られてきた部分がありますが、これは本当の初期の国際法であって、少なくとも19世紀末以降の国際法は、国内法とは別個の法体系として構成されています。中には国内法と同一の原理が適用になっているものもありますが、だからといって国際法は国内法と全て同一の原理で動いていると考えるのは誤りです。(国によって制度が違うことでも十分推測できることでしょう。)

3 国際法は国内法において法的効力を持つとは限らない。
 国際法は国家と国家との間を規律する法ですから、国家と市民との間には当然には適用にはなりませんし、ましてある国家内において権力と市民との間を規律するものではありません。国際法が国内において何かの請求の根拠になるかどうかは、まさに国内法がどう定めているかによります。

 ちなみに、国際公法という呼び方は最近はされていません。また国際私法は、複数の国家間にかわる法律の規定の違い(特に民事法、例えば契約法や親族相続法の違い)をどのように解決するかを扱う分野であって、国家や国際機関を規律の対象とする国際法とは性質上異なり、むしろ国内法に属すると言っても過言ではないでしょう。国際法が国際公法と国際私法に分けられるとか、国際法の1分野に国際私法がある訳ではないのです。


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