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親族法・相続法
親族法・相続法というのは、古くから民法の一分野と解されて来た一方で、かなり特殊な性格をももっています。
第1に近代市民法は、「身分から契約へ」の標語の下、人の属性に着目した権利・義務を否定しているのですが、親族法・相続法は、まさに人の属性に着目した権利・義務を定めています。
第2に(第1とも多少関係しますが)契約法の原理が必ずしも妥当しない場合と、契約法の原理が妥当してしまう場合とがあるというものです。前者は想像つくでしょうが、後者の例としては「相続しても登記は必要で、登記できるようになってからも放っておけば、登記をした第3者には対抗できない。」なんてえのがあります。
第3に(第2とも多少関係しますが)強行法規が意外に多いということがあげられます。その結果、家族制度という文化・慣習・風習に属することについて、親族法・相続法がかなりの影響を与えています。例えば、「長男が家を継ぐ」という発想は今は割と多くの人が持っているのでしょうが、これが定着したのは第2次世界大戦前の旧民法のシステムと言っていいでしょう。江戸時代までは武家社会に長男相続が多かったものの、日本全体で見れば長男相続はむしろ少なかったという指摘がされています。やがて現行民法のシステムがあたかも所与のものとして日本の文化・慣習・風習として定着する日が来るのかもしれません。
さて「何か相手に要求できるか」という点では、大要次のとおりになります。
まず、「人の属性に着目した権利・義務」ですから、その「人の属性」を正確に定義しなければなりません。親族法で親族の範囲をきちんと決めています。
次に、親族の範囲の変動原因について定められます。これは
- 出生によって親子となるか否か
- 出生以外の理由で親子となるか否か
- 配偶者となるか否か
- 死亡した場合に親子・夫婦・親族関係がどうなるか
- 死亡以外の理由で親子・夫婦関係が消滅できるか
と考えればいいでしょう。
そしてこれらの関係の存否が争われた場合の処理となり、一定の場合には「親子・夫婦」関係を認めさせることを要求できることになります。(余談 検察官は公益の代表者としてこれらの訴訟にからんでくることがあります。)
親族法は最後に一定の親族関係にあれば、それだけで一定の義務を認めます。例えば夫婦には同居義務などが認められます。そうするとこれらのことが果たされないとそれを要求し得ることになりますし、場合によっては金銭のやりとりという話にもなり得ます。
そして親子・夫婦関係が消滅した場合の財産の処理へと進み、その最大のものとして「死亡による親族関係の消滅=財産整理としての相続法」と考えるのがいいと思います。
これらの詳細はそれぞれ専門書に譲ることとしますが、いくつか誤解されていることを解説しておきます。
- 「婿養子」という法制度はない
- 「婿養子」に相当する制度は現在はありません。したがって法律上は「婚姻すること」「妻の両親の養子になること」を指すのでしょうが、fjの投稿を読んでいると「夫が姓を変えたこと」だけで「婿養子」ととらえている人が結構多いように思えます。
ちなみに姓がどうなるかは民法を確認すれば足りますが、戸籍がどうなるかという点では戸籍法も見ておく必要があります。
- 遺言でも変えられないものがある
- 遺言は基本的に尊重されますが、遺言で何でもできる訳ではありませんし、特に遺産については、一定の範囲の人に一定の取り分が認められ、遺言でそれを排除することはできません。
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