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ちょっと特殊な「占有権」

 ところで、民法を読むと「占有権」というのがあるのに気付くはず。しかも占有訴権という権利が認められるし、占有訴権は本権とは独立に審理されるってことまで書いてある。これって何?
 これは「自力救済の禁止」から説明した方が絶対に話が早いです。
 近代社会では法秩序を守るために「たとえ権利が侵害され法秩序が乱されても、市民自らがその是正を行うことは許されない。」という原則の下、権利侵害に対する救済も最終的には裁判所を通じて国家権力を発動することによって行われなければならないとしているのです。
 そうすると自力救済の代わりに裁判所において権利を主張して救済をはかることになりますが、一方で自力救済の禁止ということは、「裁判所で後に判断されない限り」現状は現状としてとりあえず保護されるということを意味し、現状を「裁判所を通さずして」変えられた者は、それだけでとりあえず保護されなければならないという話になります。この保護をどうやって行うか?
 日本のシステムはその現状自体を「占有権」という1つの権利として構成し、現状を「裁判所を通さずして変える」行為は占有権の侵害にあたるとして構成した上で、救済を与えることとしたのです。占有権が本権とは別に審理されるということは、現状がどうかということだけで判断する占有権の訴訟と、真の権利者は誰かということを審理する所有権などの権利の訴訟とは別だし、現状を保護する占有権の訴訟は現状がどうかということだけで早期に解決させる一方、真の権利者は誰かということは丁寧に審理しようという姿勢の現れなのです。


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