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物権・その他の法律上付与される権利
近代市民法の原則の中に「所有権絶対の原則」というものがあります。これはある物にたいしては所有権というものが成立し、誰もがその所有権を尊重しなければならないことを示しています。ここでいう所有権とは物に対する万能の権利であり、その物をこの世から消滅させることもできる強力な権利のことです。
ところが実際には所有権の効用はいくつかのパターンに分類されてしまうのがほとんどです。すなわち
- 自分で持ち続けること
- 自分で使うこと
- 他人に使わせてその対価として収益を得ること
- 他人へ担保として差し出して金銭を融通してもらうこと
- 他人へ売ってその対価として金銭を得ること
です。そして所有権が万能だとしてこういうことができたとしても、こういうことをした後はその限りで元の権利者の権利は制限されなければなりません。そこで日本の民法では「何でもできる万能の権利としての」所有権を中心に、「他人に使わせる」場合には地上権、永小作権、地役権を、「他人に担保として差し出す」場合は質権、抵当権をそれぞれ認めることによって所有権を制限するという形をとっています。
そして所有権においては、誰もがその所有権を尊重しなければならないので、次のような権利が認められます。(ここ重要!)
- 権利の侵害に対して侵害の排除が請求できる
- 侵害しないよう予防的な措置をとるよう請求できる
- 物を取り戻すことを請求できる
また所有権を制限できる権利を持つ者は、その権利の性質に応じて所有権と同様の請求権の全部もしくは一部が認められることとなります。そしてこれらの権利は物に関するものですから、誰にでも請求することができます。
一方で、物についての権利を勝手に作り出すことは混乱の素ですから、日本の民法では物に関する権利は全て法律で定めることとしてその内容も一定させ(物権法定主義)これに反することはできないと定めましたが、この物権法定主義は「契約か法律がなければ強制はできない」とする近代市民法原理からも容易に想像がつくでしょう。誰かが勝手に権利を作り出してそれを強制できるとするのはやはりおかしいのです。
さて民法上の権利は物に対する所有権を中心に構成されますが、その他に法律があたかも物が存在するかのように権利を設定しているものがあります。一番有名なのは「無体財産権」と呼ばれる類の権利で、これは民法上は独立の物としては存在していないものをあたかも物であるかのように想定して、一定の権利を発生させているものです。この種の権利は、物における所有権に準じて考えればよいのですが、発生・消滅、要件効果について独自の定めをしている場合が多いので、その点注意する必要があります。また物には所有権が認められ、これらの法律によって所有権が消える訳ではありませんから、物の所有権との関係では地上権や抵当権のような「所有権を制限する権利」として考えることとなります。
ここまで物権や法律によって付与された権利の話をしてきましたが、実は契約とはまったく無関係な訳でもありませんし、これら権利に似たことを契約で実現することも契約自由の原則から可能なのです。例えば所有権を誰かに譲ることは、これも処分の一環ですから可能なんですが、たいていは契約によって譲るでしょう、また建物を建てるために土地を借りるなんてえのは民法は地上権の活用を想定していたのですが、現実には契約で借りるケースの方が圧倒的に多かったのです。しまいには土地の借り手を保護しようというので、これら契約にも法律が介入して結果物権に近い運用がされるようになったという現象も起こっています。ただ契約は当事者間にだけ効力を持ちますから、誰にでも効力がある物権との本質的な違いはいまだ大きいでしょう。
さらに自分の権利の実行で他者に害をなしてはいけないのは物の道理と言ってよいでしょうし、その害のなし方いかんでは損害賠償請求が成立するのは間違いないでしょう。
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