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法律って何?
法律って何?この質問に答える前に、世の中の規範、ルールについての「サンクションモデル」の説明をしましょう。
サンクションというのは「制裁」と訳されることもありますが、ここでは制裁という悪い反応だけではなく、賞賛のような良い反応、もしくは価値中立的な反応も含めて広く「反応」というような意味で考えてください。世の中のルールというのは、そのルールに反した時に何らかのサンクションが存在する、もしくはそのルールを守るときに何らかのサンクションが存在するものとして把握されます。
そうするとルールというものはいくつかの階層やいくつかの種類に分けられ、その基準はサンクションの違いに求めることができます。例えば、電車を待っている時に列を乱すと、白い眼で見られるし、場合によっては注意されます。これは「電車を待つ時には列を作る」というルールが存在し、これに対するサンクションが「白い眼で見られる」「注意される」というように分析できます。
法律というのは「違反した時に国家権力によってサンクションが与えられる」点に特徴を持つルールな訳です。世の中のルールが法律しかない訳ではありませんし、法律が上だとかいや下だとか言う訳ではないのです。あえて言えば法律以外のルールで規律される範囲より法律で規律される範囲の方が狭いとは言えるんで、「法律は最小限の道徳だ」とは言えるのかもしれません。いずれにしても法律が最高のルールでもまた唯一のルールでもないことには注意が必要です。あくまで「サンクションが国家権力によって発動されることに特徴を持つ」ルールの1つであって、また1つでしかないことは確実に押えておきましょう。
またサンクションが与えられることと、「良い悪い」の判断というのは必ずしも一致しないことにも注意が必要です。良い悪いというのは各自が持っている判断軸に照らして定まる評価ですが、サンクションは社会全体によって与えられる反応です。社会全体の反応は個々人の反応の総計とは言えますし、個々人の反応は個々人の判断軸によって定まるという意味で、関連があることは否定できませんが、サンクションと「良い悪い」は別物なのです。
法律学は「国家権力によってサンクションが与えられるルール群」を客観的な研究対象とする学問です。
狭い意味では法律は国の立法機関によって制定されるルールのうち、立法機関自身を対象とする規則群を除いたものを指しますが、それにとどまらず、地方自治体の議会が制定する条例、内閣の定める政令、各省庁が定める省令、各機関が定める規則なども研究対象にしています。
憲法は、「国家権力によってサンクションが与えられるルール」とは言い難いところがあります。憲法が規制対象にしているのは権力自身だからです。しかし、(狭義の)法律と構造が類似していること、特に憲法に反した行為が無効となることについては、他の国家権力によるサンクションとも言えることから憲法も法律学の対象に含めています。
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