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名義変更しないまま車屋がいなくなった

 自動車のローンは所有権留保のパターン(所有者と使用者が別になっている)と単なる目的ローン(所有者と使用者は一緒。ローンの条件が「車購入のため」になっている)があります。ここで話題にするのは所有権留保のパターン。

 所有権留保の場合でも全部払い終わったら当然所有権が移転する訳で、それにともない前の所有者は新所有者に対して登録を移転する義務がある訳です。
 でも結構多くの人がそのまんまにしているんですね。税金ははなから使用者にかかってくるし、登録を動かしておかなくても当座困ることはない……。
 それが大きな落とし穴。
 仮に所有者の会社が倒産し、破産手続をとったとしましょう。所有者の会社がある程度しっかりしていて「この車は所有権登録を動かしてないから登録する義務がある」ってことを帳簿に残しておけば、これはある意味話が簡単。破産管財人が気をきかして連絡をしてくれるかもしれないし、少なくとも破産管財人に頼めば登録を変更して一件落着。でもこれはだいぶましなパターン。  多くの会社ではそういう記録が残っていなかったり、管財人も調査しきれないまま破産手続が終わってしまうこともある。(あんまり特別清算をすることはない、)そうすると話が面倒。
 というのは自動車の所有権の登録については、旧所有者と新所有者の双方が連名で申請しないとだめ、特に新所有者の申請だけではだめというのが運輸事務所の見解なのです。「前の所有者が倒産しちゃって」といくら口頭で説明しても、「それはお気の毒に」とは言ってもらえるかもしれないけど、せいぜい言ってもらえるだけ。登録は動きません。(これ考えてみたら債権回収メールと同じ筋の話なんだよね。自動車の登録って自動車の権利関係の公示という要素もあるんだけど、旧所有者の「あの人にあげました」はまだ信用できるけど、新所有者(と称する者)は、根拠無くいくらでも「自分のものです」って言えるんだから、それで登録動かしていたら、登録があてにならなくなるでしょう?)
 さてどうしましょう?

 法律的には全く手がない訳ではありません。所有権がうつった後の登録義務というのは立派に債務ですから、債務を履行するよう裁判所に訴えを起こすという手があるのです。その際、相手の会社が仮に登記簿上閉鎖されていたとしても、債務が残っていることが判明した時点で、会社としては清算が終了していないまま存続しているということになり、その清算人がいればいいのですが、まあいないでしょうから会社についての特別代理人を選任してもらい、その人に相手方となってもらって訴訟を進めることになります。たぶん第1回口頭弁論で即日結審、次は判決宣告でしょう。特別代理人の選任にちょっと見たとしてもまあ普通の裁判よりちょい長め、3か月程度で終わると思います。そしてその判決正本に執行文もらって運輸事務所に持っていけば無事登録は終了という次第。
 ただこの方法、通常、特別代理人は裁判所の方で弁護士を選任するのですが、これが2〜10万円程度はかかっちゃう。余計なお金がかかるんですね。(裁判の費用自体は収入印紙と切手とでたぶん2万円かからないと思います。金額から見れば簡裁でも可能。)
 さらに悲惨なのは夜逃げしちゃった場合で、法的な清算手続をとってなければ名目上は存続していることになる。だから存続しているという前提でまずは進めないといけない。ところが運良く判決の送達までできればいいんだけど、途中で「実はそこにいない」なんてことがわかると……。相手方の公示送達やら、運が悪ければ「特別代理人選任コース」。こうなると3か月じゃあ終わらないなんてことになる。

 だから後々のことを考えれば「登録変更できる時に登録変更しておく」のがベストでありオンリーな訳です。

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