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債権回収メール

 ある日郵便受けを見てみると、「あなたの○○の使用料が払われていません。当社はこの債権を譲り受けましたので、至急当社に支払ってください。支払がないと法的手段をとります。」なんて書いてある。(もしくはメールで届いたりする。)
 「もしかしてあの時見たアダルトサイトかしらん」
 思い当たるふしがないでもない……。
 そんなんで訴訟沙汰になったらやだなあ……。

ルフィミア
「思い当たるふしがあるんですか?まさと先輩?」
まさと
「る〜ちゃんのサイトなら、アダルトサイトでなくてもつい見ちゃうよ!えっへん!」
ルフィミア
「え、えと〜、あの〜……。」
 正直なところ、これも「なんでだまされるかなあ」って気がする類です。
 まずたいていは元々の債権が存在していません。契約がいつ成立するのかという点についての民法上の基本的な議論については こことか こことか こことかを読んで「合意がないし契約が成立していないんじゃ債権だって発生していないやん」と納得していただいて……。
 これ逆にあなたがインターネットで商売しようとする時のことを考えればいいのですよ。確実に料金を回収するためにはどうしたらいいか。まずサイトに許可した者以外はアクセスできないようにして、その許可は代金を前払いした人にだけ出す。前払いが警戒されるならクレジットカード払いにする。それでも警戒されるなら後払いかもしれないけど、その時にはできるだけ回収できるように、電話番号を入力させてその電話番号にかけてみて確認するとか、何らかの情報を取得しようとするでしょう?
 そういうことなしに単純に見せてお金取れると思います?技術的に?
 またインターネットを見るためにはプロバイダーと電話会社にはお金を払うかもしれないけど、特段の仕掛けがない限りサイトに対してお金を払うもんだとは思ってないのが普通だと思います。値段表の張ってない高級料亭に入って料理を食べてから「無料だと思っていた」なんてえのは通りませんが、(「有料であるのが当たり前の店で注文した」という行為で合意があったと評価できる)無料がむしろ当たり前のところで無料だと思うのはまったく不自然ではないし、いくら「有料なんだ。それを使ったら支払義務が発生するんだ」と言ってもこれは通りません。
 となると、だいたいは元の債権が発生していないのです。

 元の債権が存在してはじめて、その債権譲渡ということになりますが、ここでも問題が残ります。大家や管理会社の交替のところでもちょっと言いましたが、債権の譲渡を(債務者を含めて)第3者に対抗するためには、元の債権者から通知しなければなりません。これは物の道理としても言えることで、元の債権者が「あの人にあげました」というのはまだ信用できるけど、「私がもらいました」というのは言うだけは無料な訳でおよそ信用できるもんではありません。そうだとしたら債権を譲り受けたのだというのもまあ信用できない話でしょう。たいていは。
 もう1つ考えなければならないのは営業として債権回収をする会社は、もともと営業として債権回収をするためには弁護士の資格がなくてはならないところ、特別法で債権回収会社が認められたという歴史的経過から、その特別法による登録が必要なのです。そういう会社かどうかは法務省のサイトに掲載されている例えばここから確認できますね。

 となるとこれらについても基本的に無視でかまいません。何らかの応答をすることは「交渉次第で払ってもらえるかも」と思わせてしまうのでかえってふさわしくありません。どうしても払わないにもかかわらず法的に取り立てようとするからには、いみじくもそういう業者が言うように、法的手段をそういう業者がとらなければならないのです。ある債権を払ってもらおうと思ったら、その債権が存在することを業者の方で証明しなければならないのです。法的手段をとれば当然裁判所から何かの書類が届くでしょうから、それを見て検討するなり弁護士に相談するで充分間に合います。
 これは昔からある詐欺のパターンで(ネタ自体は時代にあわせてインターネット使用料金になってますけど、実際には存在しない料金を存在するかのように見せかけて請求するという手口は昔からあるんです。)消費者センターも数をこなしているであろうことから、相談にのってもらえると思います。(もっとも裁判所から郵便が届くまで待つで充分でしょう。)

ルフィミア
「なんか危害を加えるだとか、危害を加えないまでも仕事先に連絡するだとか、直接家におしかけるとか書いてくることもありますよね。」
まさと
「そのあたりもどのくらい本気なのか事例によって違うんですが……。
まず第1にさすがにそういうことを書くと脅迫罪・強要罪・恐喝罪になる訳で、警察は動きますよ。動かなかったら文句言ってよし。弁護士通しても、公安委員会に直接言うでも、マスコミにたれこむでも……。まあ穏当なところだと消費者センター行って話を通してもらうのかな。
第2に普通なら実際の行動には出ないもんなんです。」
ルフィミア
「そうなんですか?」
まさと
「一見すれば経済的合理性がないかもしれないけど、実はそれなりにあるんですよ。例えばそういうメールを発信する費用って今いくらかというとはがきなら1通あたり50円+いく分かの手間賃。これが電子メールならそれこそいく分かの手間賃だけですね。そして例えば1000人に出すとする。「6万円払え」と。はがきだとしても1人がひっかかればまあとんとん。2人ひっかかれば60000円は儲けと思ってよし。残りの998人は放って置いてもいいんです。もしかしたらその2人は今後も払ってくれるかもしれないし。」
ルフィミア
「なるほど。」
まさと
「ところが実際に取り立てに行くとすると、そのために交通費もかかればその他のことができないことによる損失だってある。急激にコストが上昇し、それでいて必ず払ってもらえるかというとそうでもない。なんたってまともに貸したお金ですら、支払ってもらうために家に行っても払ってもらえるとは限らないんだから……。しかも場合によっては警察に捕まるかもしれないリスクだってある。それなら普通はもう1000人にメールするんじゃない?」
ルフィミア
「それはそうですね。本当に取り立てに来たなんてことは1000人の中の他の人には伝わらない訳だし。」
まさと
「そのとおり。
実際にはそこでリスクをおかしてくる人も全くいない訳ではないんだけど、基本的には「いかにうまいこと払わせるか」という勝負なんだということは、そういう人でも考えているということなのです。」
ルフィミア
「ところでこれって何か犯罪が成立するんですか?」
まさと
「実際には債権など存在しないことを知っていたのに、知らないふりして「払え」とやったら、これは詐欺罪の実行の着手があったとみていいでしょう。そうすると少なくとも詐欺未遂罪、債権がないってわかっていたら払わないのにそこをだまされて払ってしまったのであれば詐欺(既遂)罪が成立します。また危害を加えることを言った場合には恐喝罪が成立する可能性が出てきます。ただね。」
ルフィミア
「ただ?」
まさと
「危害の内容が「法的手段をとる」だとちょっと微妙かなとは思うんですよ。訴訟手続をいやがる人はいるかもしれないけど、通常恐喝罪というのは、「Aをしろ、さもなくばBだぞ」というパターンなのです。でも法的手段をとるぞというのは結局法的手段をとってお金を支払わせることなんで「Aをしろ、さもなくば(最終的に)Aだぞ。」もっと言えば「金を出せ、さもなくば金を出させるぞ」になってしまいます。これって恐喝なのかなあ……と。(ジャイアンがのび太をいじめているようだ……。)」
ルフィミア
「実際にはまさと先輩のところには債権回収メールとか郵便とか来たことないんですよね?」
まさと
「SPAMは山のように来ているんだけどね。(泣)」
ルフィミア
「こういうのに対する自衛策ってないんですか?」
まさと
「自衛策って言えるのかどうかわからないんだけど。この種の案件でだまされる人って脇が甘いなあって感じがするんですよ。「私はだれそれから債権を譲り受けました」なんて言うのは言うだけ無料なんだから普通信用しないんじゃないか?あとインターネットの使用料で言うと、後ろめたいこととか恥ずかしいとか言う経験があるからひっかかるんで、債権回収メールにびびるくらいなら信用できないようなリンクは最初からたどらないってことが必要です。携帯電話の関係だと……知らない人からの着信になんでリダイヤルしたり、知らない人からのメールになんで返信したり、そこのURLからリンクたどってみようとするかなあ……。最近TVで見たワンクリック請求だって、知らない人からのメールを無視して捨てていればひっかかりようがないはずなんだけど……。」
突っ込みどころ満載!
 債権回収メールのネタをもう少し掘り下げてみました。
 例をあげて解説も試みています。
(2004.10.14改訂)

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