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司法作用に対する挑戦の罪

逃走罪(97条)
 有罪実刑判決で拘束されている被疑者・被告人や逮捕状・勾留状など裁判所が発行した令状によって拘束されている被疑者・被告人が逃げた場合に成立します。
 1年以下の懲役。
 未遂処罰あり。
加重逃走罪(98条)
 97条の逃走罪が成立する被疑者・被告人の他,勾引状の執行を受けた者について,「拘束されている場所」「拘束のための道具」を壊して逃げた場合や誰かに暴行や脅迫を行って逃げた場合に成立します。また,そういうことをしなくても2人以上で相談の上逃げた時にも成立します。
 3月以上5年以下の懲役。
 未遂処罰あり。
被拘禁者奪取罪(99条)
 97条に定められた被疑者・被告人,98条に定められた勾引状の執行を受けた者の他,法律によって身柄の拘束を受けている者(例えば少年事件で身柄の拘束を受けている者)を無理やり連れ去った場合に成立します。
 3月以上5年以下の懲役。
 未遂処罰あり。
逃走援助罪(100条)
 99条のとおりの「法律によって身柄の拘束を受けている者」を逃がすために,道具を提供したり,逃げるのを助けた場合に成立します。幇助罪的な犯罪ですが,範囲を97条や98条のようには限定していないこともあって独立の類型になっています。
 3年以下の懲役。
 逃がす目的で暴行や脅迫をした場合には3月以上5年以下の懲役。
 未遂処罰あり。
看守者等逃走援助罪(101条)
 警察官・刑務官など「法律によって身柄の拘束を受けている者」を逃がさないようにする義務のある者が逃走援助罪を犯した時に成立する不真正身分犯です。
 1年以上10年以下の懲役。
 未遂処罰あり。
犯人蔵匿・隠避罪(103条)
 罰金以上の刑に当たる罪を犯したと疑われている者や法律によって身柄を拘束を受けておきながら逃げている者を,かくまったり,見つからないようにした場合に成立します。
 2年以下の懲役,20万円以下の罰金。
 ただしその者の親族がその者のためにやった場合には刑の免除可。
証拠隠滅罪(104条)
 他人の刑事事件に関する証拠を隠滅したり,でっちあげたりした場合,さらにはそのでっちあげの証拠を使った場合に成立します。
 2年以下の懲役,20万円以下の罰金。
 ただしその者の親族がその者のためにやった場合には刑の免除可。
証人等威迫罪(106条)
 刑事事件の捜査や裁判に必要な知識を持っている人やその親族に対し,その刑事事件について,正当な理由がないのに無理やり面会を求めたり,その他無理を強いた場合に成立します。
 1年以下の懲役,20万円以下の罰金。
偽証罪(169条)
 法律により宣誓した証人が自分の記憶に反していることを述べた時に成立します。「司法作用に対する挑戦」でもあるのでここに書きましたが,実は法律によって宣誓するのは裁判だけではありません。国会でも宣誓させた上証言させることがあるので,この罪の対象になります。
 3月以上10年以下の懲役。
 ただし裁判や処分の確定前に自白した時は,刑の軽減・免除が可。
虚偽鑑定・通訳・翻訳罪(171条)
 法律によって宣誓した鑑定人・通訳人・翻訳人が虚偽の鑑定・通訳・翻訳をした場合に成立します。
 3月以上10年以下の懲役。
 ただし裁判や処分の確定前に自白した時は,刑の軽減・免除が可。
虚偽告訴罪(172条)
 他人に刑事裁判や懲戒処分を受けさせるために,虚偽の告訴・告発・その他の申告をした場合に成立します。
 3月以上10年以下の懲役。
 ただし裁判や処分の確定前に自白した時は,刑の軽減・免除が可。
封印等破棄罪(96条)
 公務員による封印や差押の表示を損壊したり無効にした時に成立します。
 3年以下の懲役,250万円以下の罰金,懲役と罰金の併科あり。
 (2011.7.14改正法施行)
強制執行妨害目的財産損壊等罪(96条の2)
 強制執行から逃れるための行為が処罰の対象となります。1号から4号までのパターンがあり,1号は,財産を隠したり,壊したりした時,もしくは実際にはそんなことをしていないのに財産を譲ったとか債務を負ったとかいう行為に,2号は財産の価値を減らしたり強制執行費用を増加させる行為に,3号は財産を譲渡したり,もしくは他人の権利を財産に設定する(典型的なものとしては抵当権などの担保権の設定や賃借権などの使用権の設定)行為にそれぞれ適用されます。3号については譲渡を受けた者,権利を設定した者も処罰の対象となります。
 3年以下の懲役,250万円以下の罰金,懲役と罰金の併科あり。
 (2011.7.14改正法施行)
強制執行行為妨害等罪(96条の3)
 強制執行を妨害するための直接行動の一部が処罰の対象となります。1項では,立入,占有者の確認など強制執行手続の中で行われることとなっている行為を直接妨害した場合,2項は,強制執行申立をさせないように,また申し立てられた強制執行を取下げさせるために申立人や代理人に暴行・脅迫を行った場合,それぞれ適用されます。  3年以下の懲役,250万円以下の罰金,懲役と罰金の併科あり。
 (2011.7.14改正法施行)
強制執行関係売却妨害罪(96条の4)
 強制執行時に,何らかの策略で,もしくは威力を示して,不公正なことをした場合に成立します。
 3年以下の懲役,250万円以下の罰金,懲役と罰金の併科あり。
 (2011.7.14改正法施行)
加重封印等破棄等罪(96条の5)
 96条から96条の4までの各条文に該当する行為を,報酬目的で(自分が得るか他者に得させるかは問わない)行った場合に成立します。
 5年以下の懲役,500万円以下の罰金,懲役と罰金の併科あり。
 (2011.7.14改正法施行)
公契約関係競売等妨害罪(96条の6)
 1項では強制執行以外の競売・入札時に,何らかの策略で,もしくは威力を示して,不公正なことをした場合に成立します。
 また2項では,公正な価格から外れさせる目的や不正な利益を得る目的での談合も処罰対象にしています。
 3年以下の懲役,250万円以下の罰金,懲役と罰金の併科あり。
 (2011.7.14改正法施行)

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