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あなたのカードの買物枠を現金に

 元々中古販売でも金融物という技法がありました。例えば6万円でカメラを買う。これはクレジットカードで買ってもいいし、月賦のきく店で買ってもいい。15回払いで手数料10%としましょうか。合計66000円の15回だから1回あたり4400円。この品物をすぐ中古屋に持っていって買い取ってもらう。買い取りの値段はわからないけど仮に3万円で買い取ってくれたとすれば、結局この人は3万円を手に入れ4400円を15回払いで払うことになります。
 でもこの方法はちょっと危ない面があります。
 クレジットカードや月賦の契約の中で所有権をどう扱っているかについて、もし「完済までは所有権はカード会社もしくは店に残っている」といういわゆる所有権留保の規定がある場合、これは買ったというよりは他人の物を使わせてもらっている関係にあり、あたかも自分の物であるかのような処分はできないとされていますから、契約違反を理由に残った金額の一括返済を求められても仕方ありませんし、横領罪を問われてしまうかもしれません。(所有権留保がなければこういう問題はおきません。)

 「あなたのカードの買物枠を現金に」というのはどういうシステムなのか。正直言ってわかりません。ただいくつか想像はできます。
 1つはいわゆる金融物の技法をそのままやっている場合です。指定された店で指定された品物を買ってくるよう指示され、それを買い取って現金を渡すもの。この場合もしそのカード会社が所有権留保の規定を定めていれば、上で述べた問題点がそのままあてはまってしまいます。ただ最近は「カードの枠の90%以上」をうたい文句にしているところがあるんですが、金融物の技法だとそんな高率の買い取りは買い取った側での転売利益があまり出ないのでちょっと困難です。実際この形のもので詐欺に近いものもあります。というのは指定された店で指定された品物を買ったはずなのに、いざ持ち込んでみるといろんな理由をつけて買いたたく。品物をクレジットで買ってしまった訳だから返品もできないので、泣く泣くその値段で売ってしまう。これだと店に利益が出ますが、一方で最初から買いたたくつもりであれば店に詐欺が成立するでしょう。もっとも詐欺だからと言ってお金が戻ってくるものではありません。
 次に考えられるのが、その店自体がカードの加盟店になっていて、物品を販売したことにして、実際には現金を渡すというものです。これだとなんとなくですがカード会社と店との間の加盟店契約に違反していそうな気がしますし、場合によっては店のカード会社に対する詐欺罪(そうなると客だって店と協力している訳で詐欺罪の共犯に問われる可能性が出てきます)が成立するでしょう。もっともこの点は、加盟店契約を読まないと正確な判断はできません。この方法だと90%という高率が実現可能です。というのは10万円の物品を売ったことにして9万円を渡しても、店にはその後で10万円が入るのですから1万円(約10%)の収益が見込めるからです。
 販売したことにするのがまずいのであればというので、あまり価値のないような物を10万円で実際に販売してしまうというのは、この変形としてあるかもしれません。その商品売買契約にキャッシュバックすなわち後での現金払戻の特約を付ける形で、お金を渡すものです。売った物を買い取るという話ではないので横領罪を問う余地はありません。(ただ加盟店契約の点について詐欺罪が成立する可能性は残ります。)
 さらにその店と別のカード加盟店とが組んで同じことをやるパターンがあります。自分で加盟店にならなくてもいいというメリットがありますが、収益の一部はその店に渡さないといけないでしょう。物の受け渡しはあってもなくてもかまいません。あったとしてもちょうどパチンコ屋の特殊景品のように、同じ物がくるくる流通していくだけです。

 ここでは「分割払いで買った物を払いきる前に売ったりすると問題が発生する場合がある」ということだけ覚えておくことにしましょう。

(2004.10.4改訂)

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