ある日郵便受けを見てみると郵便が入っている。開けて読んでみると「当物件の管理を○月○日からはじめました。つきましては今後の家賃は××に振り込んでください。」と書いてある。でも近所の人に聞いてみると「悪質な詐欺なんですって。」……。
こういう例が大都市を中心に増えているそうです。
これ正直なところ「なんでだまされるの?」って感想を私個人は持っています。
確かに法律には定めがあって、「賃貸人の地位が移転したことを理由に家賃の請求をするには、借主が二重払いにならないように、自分が新しい所有者であること登記をしておかなければならない」とか「自分が債権を譲り受けたと(債務者も含めて)第3者に主張したければ、元の債権者から通知をしておかなければならない」ということになっています。しかし仮に法律に書いてなくても、物の道理から考えて当たり前のことではないかな……と思うのです。だって「私が譲り受けました」というのは誰でも言える訳でしょ?誰でも根拠なく言えることをいきなり信じちゃっていいのかなあ……。
この事件、今のところは大都市に多いのですが、大都市は一方で大家と店子が互いに顔を合わせない、仲介の不動産業者と管理の不動産業者にまかせておけばきちんと住めるというので便利は便利な訳です。そしてその割には「とりあえず信用してしまう」田舎の習性から抜けきれないでいる、そのギャップの問題なのかもしれません。
対策はある意味明確です。法律で定められてある種の例外を除いて、「私が譲り受けました」というのは信用してはいけません。無視したってかまわないのです。
どうしてもというなら元の大家なり管理会社に確認をとりましょう。それでわかるのではないでしょうか?
わからないけどなおなんとかしたいのであれば、(弁済)供託してください。供託を受け付ける近くの法務局に行って、「家賃を払いたいんだけどこういう理由で債権者がわからないので供託したい」というと、説明してくれると思います。供託をして一定の手続をとると、きちんと家賃を払ったことになります。
法律で定められているある種の例外は次のとおりです。
まず家賃自体が差し押さえられている場合があります。この場合には「債権差押命令正本」という書類が特別送達郵便で届けられていますし、そこには第3債務者として店子の名前が書いてあるはずです。この場合には中の書類のとおりにすればいいし、難しくて意味がわからなければ裁判所に聞けばいいでしょう。その際正本の右上か左上に「平成X年( )第Y号」(かっこの中はカタカナ)と書いてあるのですがそれを伝えると話が早いと思います。
次に破産や会社更生などの清算・再建型の手続が裁判所の下で行われている場合があります。この場合には裁判所から通知がいかずに管財人から通知される場合があります。その通知に疑問がある場合には裁判所に確認をとるとよいでしょう。
3番目に当該不動産が競売によって売られた場合があります。この場合、裁判所から通知がいかないことの方が多いでしょうし、賃貸借契約も当然に継続する訳ではありませんから、必ずしも住み続けられるものでもありません。ただ新しい所有者は裁判所から受け取る書類、例えば売却許可決定正本だとか、新しい登記簿の写しなどを持っているでしょうから、それをみせてもらうなり、裁判所に確認したり、法務局で登記簿を見たりしてください。
一般論として裁判所からの郵便は無視すべきではありません。
最後に。
もしこの種の事案でだまされて払ったとしても、正しい大家には別途払わないといけません。だました相手には自分で請求しなければなりませんし、大家に対し「あの人からとって」という訳にはいかないのです。
だました側に詐欺罪が成立するのも争いのないところでしょうが……。それでお金が戻ってくる訳ではありません。