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5 共犯

 さて、ここまで述べたことが基本形になりまして、ここから先はその応用編ということになります。
 応用編のその1は、複数の人間が同じ犯罪にからむ「(広い意味での)共犯」です。

(1)実行共同正犯
 で、構成要件に該当する行為を手分けして行うのが「実行共同正犯」もしくは単純に「共同正犯」と言います。これの処理は簡単です。全員に同じ犯罪が成立します。もっとも処罰のさいには、個人的な事情を加味して刑が異なることはむしろよくあることです。

(2)共謀共同正犯
 学説はおおむね批判的ですが、実務では確立しているのが、共謀共同正犯です。これは、共謀の下にある犯罪が行なわれた場合に、共謀に参加した者全てを等しく同じ犯罪を犯したものとして取り扱うものですが、共謀という概念がなかなかやっかいです。判例では、
・複数の人間が特定の犯罪を行うため
・共同意思のもとに一体となって
・互いに他人の行為を利用し
・各自の意思を実行にうつすこと
を内容とする謀議をもって「共謀」としています。
 これはどういう状況を想定しているかというと、一番イメージしやすいのは暴力団などの組織犯罪でしょう。組織として一定のことを決め、その決定の下に犯罪が行われた時に、共謀共同正犯を問うのです。全員が実行共同正犯に問えるのであれば、共謀共同正犯ということを言いださなくてもいいのですが、構成要件に該当する行為をしなかった者は実行共同正犯には問えないわけでして、でも実態は、実行共同正犯を問えない者こそが重要な役割をはたしていることが多く、そういう者を処罰するために編み出された議論だと言えばイメージをつかみやすいでしょう。
 もっとも実際の例としては、「ある人が別の人に殺人を依頼した」などという場合に、両方を殺人罪に問うことに使われることの方が多いでしょう。

(3)幇助犯
 実行共同正犯が構成要件に該当する行為をした者全てに同じ犯罪を問うものであるのに対し、構成要件には該当しないんだけど、他人の犯罪に犯罪と知りながら協力する行為を行うと、その犯罪の幇助犯が成立します。従犯とも言います。
 幇助犯については、他人の犯罪に犯罪と知りながら協力するものである限り、どんな行為であってもかまいません。一方、他人の犯罪が実際に犯罪とならなければ、幇助犯も成立しません。

(4)教唆犯
 他人に特定の犯罪をするようそそのかし、そそのかされた人が本当に犯罪を行った場合、そそのかした方にも、その犯罪の教唆犯が成立します。


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