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離婚の慰謝料なるもの

 離婚すれば慰謝料の話になる……よく言われていますよね、でも法律的には概念を分けて考えています。「慰謝料」「財産分与」「養育費」と……。
 第1の慰謝料は、「したくない離婚をせざるをえなくなって精神的な損害を受けた。この損害を賠償してもらいたい。」ということでやりとりするお金で、民法709条以下の不法行為に基づく損害賠償請求権によるものなのです。したがってこれは離婚の原因を作り出した側がそうでない側に支払うものでして、どちらが先に離婚を言い出したかには関係ありません。そして本質が不法行為による損害賠償なのですから、「お金がないから払えない」ってことは通りません。
 第2の財産分与は、慰謝料とは違い、残っている財産をどう2人で分けるかという問題です。
 これも厳格に言えば2つのパターンに分けることができまして、1つは民法762条の共有推定を受ける財産のように、どっちの財産とも言えないようなものについて半分半分に分けるような処理をさします。もう1つのパターンは名目上は片方の財産であるかのように見えるんだけど、夫婦の協力がなければ手にできなかったような財産なんだから、きちんと分けなさいよ……というものです。前者に対しては今財産として残っていなければ分ける必要もないのでしょうが、それでも「私の分まで勝手に使った」となればその分を補わなければいけないでしょうし、後者については財産が残っていなかったにしてもその分を補うって話になるでしょう。ただ慰謝料と区別しなければならないのは、慰謝料は離婚原因を作った側が払うものですが、財産分与は単なる清算なので離婚原因とは無関係な点です。
 最後の養育費は、たいてい子供が一定年齢(18歳が多いと思います。)に育つまで、一定の金銭の給付をするものです。これは直接の規定は民法877条の扶養義務の規定によります。夫婦という関係は離婚で消えますが、親子という関係は親の離婚では消えない訳です。 そして親子が直系血族なのは間違いないのですから、877条の扶養義務を果たさねばならず、その一形態として養育費を払うという話です。この養育費は離婚原因とは無関係であることは財産分与と一緒です。しかし877条は自己の生活を犠牲にしてまで……とは解されていないので、お金がないから払えないという言い訳が通りやすいでしょう。
 などとつらつら書いてきましたが、実際の家庭裁判所の調停では、必ずしもこれらの計算を厳格にしている訳ではありません。「払えない」という話には「本当か?」と調べますが、3つあわせてトータルでは?みたいな決め方もまた結構されています。
 でも、一応はこのように分けて考えるのだ。これが基本なのだ……というのは覚えておいても損はない知識でしょう。

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