意外に区別できていない人が多いんですね。
ある行為が罪になるかどうかと、ある行為を理由に損害賠償請求ができるかどうかは全く別論です。
そして損害賠償請求ができるかどうかは、ひとえに民法709条の不法行為の要件を満たすかどうかで決まるのです。名誉を棄損した場合か否かで答が変わる訳ではありません。
これまた勘違いしている人が多い。名誉毀損罪というのは端的に言えば、肉体的に傷つける「傷害罪」等に対し、感情的に傷つける犯罪なのです。本当のことだって傷つくことはあり得ますし、場合によっては本当のことだからこそ傷つくのです。傷つくのであれば名誉毀損罪成立です。
話をややこしくするのが刑法230条の2ですが、これだってよく読めば「本当だ」ってことだけが要件になっている訳ではありません。「事実が公共の利害に関すること」「目的が専ら公益を図ること」という絞りがかかっていますが、復讐のつもりで秘密を暴露することや他者を攻撃するようなことがこの絞りではねられることは言うまでもないでしょう。
ちなみに個人がある会社を相手に批判するホームページを作っていたところ、そのホームページの公開を包括的に(どこのサイトであろうと、どういう手段であろうと)禁止する仮処分が先日出ました。
法学教室2001年5月号にもありますが、「現実世界でいけないとされることは電脳空間でもいけない」のです。
中には名誉毀損で訴えるということを言って脅かす人もいるみたいだけど……。
これまた極論。
例えば客観的で検証可能なデータを示すような議論は、その結果として傷つくことがあったとしても名誉毀損にはなりにくいでしょう。そのような議論までだめとすればおよそ学問が成り立ちませんし、また人類の進歩というのもあり得ないでしょう。さらに客観的で検証可能であれば、そのデータの誤りも容易に導けるはずです。
また客観的で検証可能なデータの上で、判断基準を示した上で評価するような行為も、これまた名誉毀損にはなりにくいでしょう。理由は客観データと同様です。