「法律が全てではない」「それは法律に反しているからだめだ」「法律に反しなきゃ何をしてもいい」って言うのは意外にfjで見られる主張なのですが、これどうも共通の認識があるように思えるのです。
その認識というのは「法律こそが最高最上級のルールなんだ」というもの。この認識があるからこそ、「法律に反しているからだめ」と主張するし、「法律に反しなきゃ何をしてもいい」って主張になるのですね。
でも法律学では「入門」「概論」的な話の冒頭で、これら主張が正しくないことを学ぶのです。
法律学も社会科学の一員なもんで、まず自分達の守備範囲というものを確定します。もっともこれは人によって差異がある訳ですが、例えば私はこの点ではデュヴェルジェの手のものなので、「法律学というのは法律という社会的事象を客観的な研究対象として扱う学問である」とした上で、その研究対象である「法律」というものの性質を探るのです。
まず法律を含めてルール一般について、「ルールとルール違反に対するサンクション」という構造が存在することを指摘します。例えば電車待ちで列を乱せば(ルールの存在)白い目で見られる(サンクション)とかいうように。そして法律というのはサンクションが国家による制裁であるルールであると説明します。
そうすると世の中のルールは法律だけではないことがまるわかりですよね?
さらにいい悪いの判断基準は人それぞれであって、法律と全く同じって人はまずいないですよね?だから「法律に反しているか否か」と「いい悪い」の基準は、たいていの人は違うはずなのですが……。
だからこそ「法律に反しなきゃ何をしてもいい」なんて言われると、おつきあいしたくないなあと思うし、「それは法律に反しているからだめだ」と言われると、「法律がなかったらOKなの?」って変に思うし……。
そしてこれはこういう違和感を感じる方が正解。
そうなると「法律が全てではない」というのも「当たり前」な話なんですな。なんで当たり前のことを言うんだか。
でもこういう発言が飛び出すってえのは、えてして自分としては「法律こそ全て」と思っていて、しかもその下での主張が違うと否定された場合です。もし「法律は1つのルールにすぎない」という法律学の基本をおさえていたら、出るはずのない主張なのです。実際法律学をやっている人で法律を絶対視している人はいないんじゃないんだろうか……。「法律の守備範囲はここまで」という感覚は法律学をやっている人の共通の認識だと思います。
もっとも範囲の広い狭いはありそうだな(笑)。
法律学を学ぶことで法律の限界を知ります。
ことのついでに法律以外のルールがあって、これらルールも同じ構造で説明できるということも知るのでして、広く「ルール」というものを考えるのが法律学だという言い方も可能です。
ちなみに「それは法律違反だ」って指摘は慎重にした方がいいと思いますよ。
間違いだって指摘する投稿が間違いだったら目もあてられないから(笑)。