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どこで決済?

 ぺんぎん屋では通信販売ですから、代金の支払や発送についてきちんと定めてからそのとおりに行います。現実の商売でも特に契約書を作る場合にはそのあたりの手順をきちんと定めているでしょうし、スーパーで買い物とか言えばたいていは現金なりカードなりで決済してしまうんでやはり問題にはならないのです。
 もし定めがなかったら……。
 民法484条は「特定物の引渡なら債権発生時にその物のあった場所、それ以外は債権者の現住所」と定めています。大原則は債権者の現住所に行きなさいってことなので、相手のところまで持って行きなさいという定めです。これを「持参債務の原則」と呼んでいます。
 一方ぺんぎん屋が1点物のぺんぎんのぬいぐるみを売る時のように特定物の引渡については、契約時にそのぬいぐるみのあった場所であるぺんぎん屋の店頭なり倉庫なりで引き渡せばよいことになります。
 次に代金はどうか?
 これまた定めがないと484条の問題になりますので債権者の現住所ってことになります。しかし売買の時に特定物なら物の場所、そうでなければ債権者であるお客の住所で物を引き渡し、代金はというと債権者である店の場所でってことに解するのは、いくら定めがないせいだとは言っても煩瑣にすぎるでしょう。というので574条はその例外として「売買の時は物の引渡の場所で代金も決済」ということにしています。ですから特定物であれば物の場所で、そうでない物はお客の現住所で代金も決済することになるのです。
 ちなみにどこで決済するかという問題はもう1つの結構重要な局面で使われます。というのは「そこまでの輸送費用、送金手数料はどっちもち?」という問題も、どこで決済するかという問題として解決するからなのです。例えばお客の現住所で代金も決済ということであれば、お客の方では自宅で現金を用意して待っていればいい訳で、もし店の銀行口座に振り込んでほしいというのであれば、余計な手間をお客にかけさせているのですから、振込手数料は店持ちという結論になるのです。また特定物なんで店で引き渡せばいいってことであれば、お客のところまで届ける送料はお客持ちになるのです。
 で、現実にはこういう問題もきちんと定めておくことで解決している例が多いのです。通信販売だと代金の送金手数料はお客持ち、送料もお客持ちというパターンが多いでしょう。

商法の特則

 特定物では民法の「契約時に物があった場所」に対し「行為時に物があった場所」と若干異なっています。またそれ以外の場合民法が「現住所」となっているのに対し「営業所」となっているのは、商法ならではと言えると思います。
 そして法令や慣習により取引時間の定めがあれば、履行や履行の請求は取引時間内にやることになるのが商法独特の定めでしょう。もっとも民法にはその定めはないものの、一方であまりにも非常識な時間に履行や履行の請求をしても効力がないと考えられていますので、結果的には同じになる訳ですが……。

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