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物がない!part1

 ぺんぎん屋ではあまりないケースなのですが……。なぜなら物があるのを確認してから契約を成立させるし、物がなければ契約を成立させないんで……。だけど例えば遠方にある別荘なんかを売る際に、現地調査をしないで買うのはまあ論外としても(とはいえこの論外をやる人が世間には結構多いのですが)現地調査をした後、契約をするまでの間に当該別荘が壊れてしまったということは、これはないこともありません。壊れたと言ってもピンからキリまであって、ちょっと修復すれば直るってものから全壊というのまであります。こういう場合どうするか?
 契約の時点で実は全壊していたという場合には、契約自体無効になると考えられています。これは民法上はっきりとは書かれていないのですが、「不可能なものの債務は存在しない Impossibilium nulla obligatio est.」というローマ法由来の法格言が適用になる、いわば民法に書かれていない民法の原則として考えられている原則が適用になり、「全壊していれば履行のしようがない」として、別荘の引渡義務が存在しないこととなり、それと同時に、対価である代金支払債務もまた存在しないこととなると考えられているのです。債権も債務も存在していないのですから契約自体が無効なんだと。
 一方全壊ではない場合には、とりあえず履行は可能な訳ですから、無効ということにはなりません。「こんなはずではなかった」というのは「錯誤」の問題として取り扱われます。
 また物がないと言えば、売買契約時にその物が自分の物ではない場合も、一種の「物がない!」にはあたるでしょう。
 日本の民法では、他人の物を売買の対象にすることが、直ちに契約が無効になる理由にはならないのです。それはたいていの場合「その人から買い取ることは不可能ではない」と考えられているからです。「その人から買い取ることは不可能ではない」とは言えなさそうな状態になればその時点で話が変わってくるのですし、最初からそうだというのであればやはり無効にはなり得るのでしょうが……。

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