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質権の弱点・質屋の弱点
- 物を取り上げないですむ担保制度はないものか?
- 約定担保物権として民法が当初用意したものは、「不動産は抵当権、動産は質権」で、抵当権はいざという時だけ発動され、普段は借主がそのまま使ってていい、質権は借主から取り上げないとだめだというものでした。しかし、動産でも借主から取り上げなくてもすむ(その代わり、「持っていればそれはその人のものという推定はききにくくなる。)担保制度の要請が高まり、結局譲渡担保などの新たな物権の制定(追認)につながりました。
ちなみに不動産質は、被担保債権が弁済されたら直ちに質物である不動産を返還しなければなりません。したがって農地には適していても、建物やその底地としての土地には適していません。しかも農地の質入には許可が必要ですので、いよいよ不動産質の出番は減っています。将来的には収益物件といわれる「賃貸して賃貸料を得る目的の土地建物」について不動産質の出番が来るのかもしれませんが、現状では同じことを別の方法で行っているのがほとんどです。
- やはり利息が高い
- 質屋側でも利率を下げたり計算方法を改めたりして努力をしているところではありますが、いかんせんいわゆるサラ金などの消費者無担保貸付の利率が上限年29.2%(月2.4%)まで下がりますと、いくら事実上単利で保管料込みだと言ったところで、月9%の数え月計算では、「無担保貸付の方がいい」というのは仕方のないところだと思います。保管料も含まれているというのは供給側のコストの問題な訳で確かに無担保貸付の場合にはその分は不要なのは間違いありません。しかし無担保貸付の場合貸し倒れがそのまま損失につながりますから、コストはその分やはりかかっているのです。質屋の場合質物の市場価値を超える貸付をしない限り、貸倒損失は発生しません。一般に無担保貸付の方が利息が高いのは、貸倒損失を見込みその分も利息で回収しようとするからです。もし1年間の貸倒発生率を20%と見込むなら5人に1人は返せなくなるので残り4人で同じ金額を返してもらわないと元がとれない。1人に1万円ずつ貸したのであれば5人で5万円、それを4人で返すとなれば1人あたり1万2500円、すなわちそれだけで年25%の利息をとらないと経営ができないのです。貸倒発生率を下げ、1年ではなく数年で返してもらうことにすればこの年25%を下げることが可能ですが、質屋にはないコストの要因になります。一方で無担保貸付については高率の利率が社会問題になって、法によって強制的に下げられたこともあって、大手業者への集中が進むことになったのですが……。質屋営業法の改正が行われなかったというのは、今や消費者無担保貸付ほどの社会問題が発生しなかったということも表しているのですが、無担保貸付より担保貸付の方が利息が高いのは、経済原理に照らしても不自然なことではあるのです。
もっとも質屋の効用は単純に利息の多寡ではなく、「自分の財産を現金化するのだから、プライドを傷つけられない」「取り立てが厳しくない」「返さなくても質草を諦めればそれで終わり」というあたりを考えればまるでだめということでもないですし、マクロ的にも「質草に限定されるから、それ以上の信用供与はあり得ないし、そうすれば過大な信用供与によるインフレの心配がない」と言えるでしょう。
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