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質屋のシステム

 質屋の仕事には2つのパターンがあります。1つは質権を設定してお金を融資するパターン。あくまで返済されることが前提です。利息が利益になります。もう1つはいわば古物商としてのパターン。中古の品物を安く買って高く売る。その差益が利益になります。

 まずは融資の場合。
 お客さんが持ってきた質物を鑑定して融資できる金額を決め、それで納得してもらえると、(初めての場合には、身分証明書で住所氏名等を確認した上で、)質物を預かり、質札とお金を渡します。納得してもらえない場合は融資はしませんが、その場合でも何かを払う必要はありません。鑑定をしているとは言えますが、鑑定料は無料です。
 この時の融資できる金額は、実際には質物の市場価格や交換価値だけで決まるものではありません。お客さんが間違いなく返してくれるのであれば、利息分がまるまる利益になります。そうすればできるだけ多く貸した方が有利です。しかしもし返してくれなかった場合には、話は逆になります。質屋ではもし期限内に返済しなければ、流質契約に基づいて質物の所有権を取得します。そして自分で買おうと思っていた品でない限り、その質物を中古品として販売することになりますが、販売価格が最初に貸したお金や利息などに足りなくとも、その分を債務者に請求することが法律上できないため、最初に貸したお金こそが中古品のいわば仕入れ値になります。そうするとお金を返してくれず、質流れになりそうだと予想するなら、いわば仕入値である最初に貸したお金は、安ければ安いほどよいのです。ここに質屋の判断が入るのです。

ルフィミア
「学生街の質屋で卒業証書でお金を貸したって伝説を聞いたことがあります。」
まさと
「留置的効力って主観的価値が高いほど有効なんですね。逆に客観的価値が高くても主観的価値が低ければ、留置的効力は期待できない。融資できる金額の見極めには、この客にとっての主観的価値がどのくらいだろうという読みが必要になるのです。そして主観的価値が高いのであれば、必ず請け出すだろうから、立派に担保の用をなすのです。もし客観的価値(代表的なものは市場価格でしょうけど)しかなければ、この事例、無担保貸付とどこが違うんだってことになるし、もしくは単純に人情話でおわってしまいます。」
ルフィミア
「でも、人情がなければそもそも貸さないのでは?」
まさと
「それなら人情があれば商売抜き、無担保でも貸すでしょ?実際に店主のポケットマネーから貸したって伝説もあるようだし。」
ルフィミア
「あ、なるほど。」
まさと
「単純にビジネスライクで行っているわけではないかもしれないけど、経済的合理性のある行為でもあると思うんですね。」
 貸付期間は貸した日から3か月です。1月15日に借りたのであれば3か月後である4月15日までに(質札持参の上)利息と元金を一括で支払えば、質物を返してくれます。質権の場合、元金と利息の他、遅延損害金やら質物の保管費用とかもろもろも請求できるのですが、営業質屋の場合には元本と利息以外はとられません。(質物保管費用は利息の中に入っているって発想ですし、流質すればいいので、遅延損害金という話になりません。)また多くの質屋では利息だけ支払った上で、期間の延長を認めてくれます。
 利息の計算方法は店によって違います。店によって違うし、同じ県内は統一しているというところもあります。
 1つの代表的なパターンは、数え月計算です。具体的に言うと1月1日から1月31日までのいつ借りても、まず1月について1か月分として計算し、2月1日になれば1か月経過としてさらに1か月分の利息を加え2か月分として請求し、2月末日まで同じ利息額というものです。
 もう1つの代表的なパターンは、暦にしたがって1か月単位に切り上げるというやり方で、1月15日に借りて2月13日に返せば、切り上げて1か月なので1か月分として計算するもの(この場合、数え月計算だと2か月になりますが、一方で切り上げ計算だと2か月になってしまう2月16日になっても相変わらず2か月分です。)
 最近はきちんと日割計算するところもあります。
 利息は質屋営業法による上限月9%(月9分というところも多い。1分は1%)のところが多いのですが、これより低くしているところもありますし、金額によって差をつけているところもあります。

 もし3か月以内に元金も利息も払わなければ、流質契約に基づき質物の所有権は質屋に自動的に移ります。その代わり借主は元金も利息ももはや1円たりとも払う必要がないし、質屋から請求することもできません。質屋では基本的に「もうそろそろ期限ですよ」などという案内や催促はしないものですから、流したくないものの期限を忘れると大変なことになります。

 一方買い取りの場合には、単純に鑑定し評価をして、それで良ければ買い取ることになります。その時の値段も売れる値段を想定して、そこから利益を最大にしつつ、なおかつお客さんが売るのを諦めるような値段にならないように提示することになります。そしてこれは質屋に限ったことではありません。物を仕入れてそれを販売して差額を利益にする商売共通のことです。

 ちなみに質物をきちんと保管しなければならない質屋の義務に着目して、「ある種の高価品を保管してもらうため、質に入れて、使う時だけ請け出す。お金が必要な訳ではないから。借りる金額は少なければ少ないほど利息が安くなるのでよい。この場合の利息は実質保管料なので、貸倉庫とかより安かったり近くにあって便利なら元はとれている」って使い方があるそうです。

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