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旧暦

 旧暦って実は法律上の根拠が全くないんですね。したがって旧暦そのものは、国立天文台では無視を決め込んでいます。したがって旧暦について国立天文台に質問しても答えられないことが多いと思いますよ。そして旧暦は、公的に正しいというのはあり得ないので、計算の仕方とかによって違いが出てくることがあり得るんです。
 旧暦というのは具体的には、1872年(明治5年)12月2日まで使われていた暦で、ちなみに1872年12月3日=1873年1月1日とされ、以後現在のグレゴリオ暦を使用することとなっております。
 じゃあその旧暦はどういう暦だったかというと、これは天保5年1月1日(1844年)から使われた天保暦です。性格としては太陽太陰暦に属する暦です。
 「日」というのは、昼と夜の繰り返し、例えば日の出から日の出まで、太陽が真南に来て次に真南に来るまでなど、比較的短期間の太陽の動きを基準として定める点はほぼ共通です。日のはじまりをいつにするかについては結構バリエーションがありますが。「月」というのは月の満ち欠け、例えば月が全く見えなくなる新月から次の新月まで、満月から次の満月までを基準にします。「年」というのは太陽の比較的長期の動き、例えば太陽が一番高くなる日から次の一番高くなる日までとか、昼と夜が同じ長さになる日から春夏秋冬と越して次の昼と夜が同じ長さになる日までというように基準にします。月の満ち欠けは潮の満ち引きと関係がありますから、それを重視すれば「月」を大切にしますし、春に種を巻くなどという農業活動を重視するなら季節に追随する「年」を重視することとなるでしょう。
 ところが、現在の天文学を基準に説明すると、太陽の動きを基準とした1か「年」はおおむね365.2422日です。これに対し月の満ち欠けを基準にした1か「月」は29.530589日です。ここで1年の日数を1月の日数で割ると12.368266681……と中途半端な数になります。すなわち「1年=何か月」とした時に、きりのいい月数を入れることはできないということなのです。そこで月は月の満ち欠けで固定してしまい、かつ1年=12か月だと決め打ちしてしまう暦を「太陰暦」と呼びます。もうおわかりのとおり、月の運行を重視し、太陽については「1年=12か月」以上には考慮しませんから、季節とは一致しないことになります。具体的には1年が354.3670680日となりますから、354日か355日としてしまうことで、それ以上には合わせないとするのが太陰暦です。したがって月の満ち欠け及びこれに関連する事項については「今日は何日だからこのくらい」という推測がたつ一方で、太陽の動きに関することには全くあてにならない、具体的に言うと1年に10.875日は平気でずれるわけですから、3年でおおむね1月ずれるわけです。これは18年で6か月になりますからある年の8月が真夏だったとして、18年後の同じ月は真冬だってことになります。これに対し1年は365日(か366日)で、1年は12か月だと決め打ちしてしまうのが太陽暦です。グレゴリオ暦だと「4年に1回うるう年、ただし100で割り切れる年は平年、ただし400で割り切れる年はうるう年」となりますからこれは400年で97回うるう年があることになります。400年間の日数は365×400+97×1=146097日。ということは1年あたり365.2425日なわけです。これを12で割ると30.436875日。これを1か月31日の月を7回、1か月30日の月を4回、1か月28日の月を1回(ただしうるう年は29日にする)とすることで月の動きを無視したのが太陽暦です。したがって太陽の動きや季節には追随しますが、「1月=29.530589日」とする太陰暦に対し、太陽暦は1月=30.436875日とするのですから、1月につき0.906286日の違いが出ます。その結果、16か月で14.5日のずれが生じますからある年の15日が満月だったとしても1年4か月後の15日は新月だったってことになります。
 そして太陽と月の両方に折り合いをつけようとした暦が太陽太陰暦です。その折り合いの付け方にバリエーションがあります。
 もう少し詳しく言うと、天保暦は太陰暦をベースにしますが、太陽の動きとの折り合いもつけるために「1年=12か月」としばりをなくします。一定のルールで「閏月」というものを置き、1年を年によっては13か月にします。このことで月の動きを基本にしつつ、太陽の動きともそんなにはずれない(1か月程度しかずれない)暦にしたのです。
 ただし、天保暦が政府(幕府)の公式の暦として使用されていた時、太陽や月の動きの観測の基準とされたのは京都でした。今は東経135度の明石市を通る線ですから、仮に今の135度の天文観測の結果を修正なしに基準にすればそれは計算方法は天保暦であっても、基準が異なる以上厳格には天保暦ではないことになります。

(初稿2009.10.4.)

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