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人工言語の著作権

 先日こんな質問が来ましてね……。
「ある小説中に著者が設定した架空の言語・文字がある。
 これら言語や文字は著作権等の保護の対象になるか?」
 そんなのわかるかい……。

 で、調べてみると、言語自体の著作権が争われた事案はないけど、スポーツのルールの著作物性が争われた事案はあって、これはルール自体の著作物性を否定しているから、同じくルールの集合体とも言える言語については、著作物性を否定してよいってことは言えそうだと。
 次に文字については、これまた判例が「情報の伝達という文字の効用を果たしている場合には、フォントについて著作物性は認められない。情報の伝達という文字の効用が失われている場合には、著作物になり得る。」と判断しているので、たとえ人工言語であっても、人工言語による情報の伝達の効用が失われていなければ著作物性は否定され、文字として意味をなさなければ著作物になり得るという結論になりそうだ、と思った次第。

 以上をまとめて文書にして答えた次第だったんだけどね……。

 まず第1にこの作者が本当に著作権を主張するのかね……と思ったのさ。
 というのは私だったら絶対に主張できねえな……と思ったからなのだよ……。
 私もたま〜に物語なんぞを書くもので、フィクションであるのがまるわかりな話なんだけど、それでも「これは現実にあった話?」なんて思わせたいって要素はある訳でして……。
 そこで「これは私が創造したものです」と言わなければならない著作権を主張するかね……。物語自体は著作権を主張しても、物語の中の世界観、システムに属することに著作権を主張したら、そういう仕掛けがだいなしになってしまうでしょう。そういうことを私にはできないし、する物書きっているのかなあ……って思ったのですよ。

 そして第2。
 著作権法は無体財産権の中でもちょっと異色だよな〜、って。いまさらながらだけど。
 1条は「公正な利用に留意しつつ」「権利の保護を図り」「もって文化の発展に寄与する」とあるように、「自由な利用」にも「権利者の保護」にも偏ることなく、そのバランスをとっていくことが最終的に文化の発展になるんだって思想なんですよね。そしてその権利は単に経済的なものだけではなく、精神的名誉的なものも含んでいてここでもバランスが求められる……と。
 その点他の無体財産権ってたいてい経済的なことだけ考えていればいいから……。
 ……そうかコンピューターゲームに関するメーカーの主張に対する違和感はここだったか……。

 質問した側はなにげない質問だったんだろうけど、答える側としては、ちょっと考えさせられるものがあるって質問でした……。

 
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