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NHK受信料に関するエトセトラ
- 問題1
- NHK受信料の根拠は?
- 解答1
- 放送法32条1項本文により、「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」に協会との受信契約が義務づけられ、その受信契約の中に受信料支払義務が定められている。
(佐々木将人)
- 問題2
- 放送法上の義務にした場合とどこが違うのか?
- 解答2
- 仮に訴訟によって請求する場合、放送法上支払義務がある場合には、放送法上の請求権に基づく受信料支払請求となるが、現行制度では契約を結ぶ義務があるものの、その義務に違反して契約を結んでいない場合には、契約に基づく請求ができないことになるので、「契約を結ぶ義務に反して結ばなかったことにより、NHKには損害が発生し、その損害額は受信料相当額である」という構成になるものと想像される。
なお、放送法には受信契約を結ぶ義務に反した場合の罰則規定が存在しないが、罰則規定がないということは「処罰されない」ということを意味しているものの、「何の責任もない」ということを意味する訳ではない。例えば単純な債務不履行は犯罪にならないし処罰もされないが、何の責任もない訳ではない。「債務を履行しなければならない」ということは相変わらず言えるし、債務を履行しなければ債務の履行や損害賠償を求められる可能性があることは、NHK受信料の問題に限らず法律一般のレベルで常識である。債務の発生原因になるかどうかは別として放送法32条1項本文が法律上の義務であることは間違いないのであるから、仮に同条項に問題がなければ何らかの損害賠償義務が発生し得ることは否定できない。この場合同条項に問題ありという主張をしていかなければならないだろう。
また、今のところNHKは実際に訴訟で請求した例はないようだが、そのことだけでは「法律上請求できない」ということにはならない。もしかしたら何か理由があるのかもしれないが、その理由が法律上請求できない理由だとは限らない。それは訴訟をするにはコストがかかるためそのコストを回避して訴訟をしないことがあり得るのと同様である。コストが見合うと判断して訴訟にふみきった場合に「コストに見合わないから訴訟しない」というのは何の意味も持たない。
(佐々木将人)(2003/11/23)
- 問題3
- 受信料の法的性格は?
- 解答3
-
- 協会の事業に対する費用負担として放送法上認められたもの
(1964年NHK見解……いわゆる公用負担説)
- 放送受信の対価(対価説)と公用負担の両者が混在する特殊の性格のものであるとの見解が多いように思われる。
(有斐閣法律学全集「交通・通信法」)
- 「協会の放送」という条件を付けている以上、協会の放送の受信の対価ではないにせよ、協会の放送の受信の可能性に対する対価とは見ざるを得ないのではないか。
(佐々木将人)
- 問題4
- 「受信できる」というのは何をさすか?
- 解答4
- 可能性を示しているのであって、「受信している」という現実態ではない。
(稲葉三千男「NHK受信料を考える」青木書店)
- 問題5
- 東京ではNHKは1チャンネルと3チャンネルである。
1チャンネルから3チャンネルまでにならないようストッパーをつければ、4チャンネルから12チャンネルまでしか受信できない以上、「協会の放送を受信できる」には当たらないのではないか?
- 解答5
- 例えば、6チャンネルだけが受信できる受信設備を自作したような場合は格別、市販の受信機に簡単な工作・改造をして受信できない状態にしたとしても、簡単な工作・改造で受信できる状態になる以上は、契約義務を免除できないとするのが郵政省電波監理局の公式見解である。
(稲葉三千男「NHK受信料を考える」青木書店)
- 問題6
- 協会の放送の受信を目的としない受信設備には何があるか?
- 解答6
- 電気店が販売目的で展示しているTVなど。
また監視カメラの映像を見るためのTVは、閉回路であって放送を受信するものではない。
(稲葉三千男「NHK受信料を考える」青木書店)
- 問題7
- 放送法の解釈にあたって標準的な文献は?
- 解答7
- 現職郵政省職員(当時)によって書かれた「放送行政法概説」が、標準的な文献と見てよいだろうが、いかんせん入手が困難である。
(佐々木将人)
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