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国際法からはじめよう
もう1つの法律学への序曲
著者 佐々木将人
イラスト ミルク・岩本幸恵
発行日 2004年11月15日
出版社 慧文社
サイズ A5並製左綴横書
定価 2000円+税
記念すべき第1作です。
結構レアな法律書に仕上がりました。
国際法を題材にした法学入門書というのもレアですし
表紙だけ見たらとても法学入門書には見えないのもレア。
それでいて中身はよくありがちな「身近な例から法律知識を得る」ではなく
「法律学という考え方を練習する」という王道を行く本になっています。
(序曲から)
結構レアな法律学入門書をお届けします。
どのあたりがレアかというと、まあいろいろあるのですが……。
物事を理解するための有力な方法として「身近な具体的な例で考える」というのがありますし、それゆえ日常生活を律する法律の代表例である「民法」を題材に
する入門書が多いのですが、この本はよりによってたいていの人にとっては「身近でも具体的でもない」国際法を題材に取り上げているのです。それでもたいて
いの話は民法を題材にした時と同じように進んでいっています。
法律学が知識と暗記ではないということは、言い方を変えると「法律学は当て物ではない」ということです。法律の意味内容を明らかにするという点では意味内
容を明らかにできないのはまずいのですが、さりとて「結論だけがあっていればいい」というものでもないのです。
国内法の場合、法システムが比較的整備されているために、説明がどうしてもシステムの説明になりがちで、そのシステムが当たり前であるかのようにされてし
まう傾向が見られます。ところが国際法ではそれが当たり前ではないことを学びます。当たり前のようなことが実は当たり前でないことを書いてしまう……。こ
れも入門書としてはレアかもしれません。
法律学の他の本を手にとってみて、わかったようなわからないような、なんとなくもやもやとしたものが残ったというあなたにとって、この本を読んだ後「あ
あ、そういうことだったのか」と理解してもらえたのであれば、もしくは逆に別の本を読んでいる時に「このことを言いたかったのか」と気づいてもらえたので
あれば、この本は大成功です。
(目次から)
序曲
第1部 国際法をかけ足で見てみよう……100mダッシュに近いかもしれない……
第2部 国際法の過程……国際法の発生から、国際法違反者への制裁まで
第1章 国際法にはどんなものがあるか
1 条約
2 国際慣習法
3 法の一般原則
4 判決
5 学説
6 衡平と善
7 条約・国際慣習法・法の一般原則の優先順位
8 国際法における強行規範(ユス・コーゲンス)
第2章 国際法はどのようにして作られるか
1 条約締結手順
2 二国間条約の場合
3 多国間条約の場合
4 条約の無効
5 留保・解釈宣言
6 新たな国際慣習法の成立
7 国際法の法典化・国際法の漸進的発達
8 新しい法の一般原則の作り方
第3章 国際法はどのようにして消えていくか
1 条約の合意による終了
2 条約の合意によらない終了
3 国際慣習法の消滅
4 法の一般原則の消滅
第4章 国際法違反があった場合の義務
1 軽微な違反については国際法上の制裁が存在しない
2 なぜ国際法はおおむね守られているのか
3 国際責任の要件1……行為の国家への帰属
4 国際責任の要件2……国際義務違反
5 国際責任の要件3……故意または過失の存在
6 発生した国際責任を消滅させる方法
7 国際犯罪
8 国際法違反がなければ国家責任は発生しないのか
第5章 国際法違反の状態が任意に解消されない場合
1 当然だけど忘れがちな前提
2 紛争解決方法のカタログ
3 国際連合が予定している紛争処理制度
第6章 法執行
1 前提
2 対抗措置・復仇
3 国際連合加盟国の場合の執行方法
第3部 国際法では具体的に何が定められているか
第1章 国家として認められるには何が必要か
1 国家の要件
2 国家と国家でないものの区別
3 国家の誕生
4 国家承認
5 国家の消滅
6 国家の誕生・消滅に際し、条約等はどうなるか
7 政府が非合法的に交替した時に国家として同一と言えるのか?
第2章 国家であれば認められること
1 基本的な考え方
2 独立権
3 国内管轄権
4 平等権
5 国際法上の国家の義務
6 外交的保護
第3章 国家の領域の範囲
1 概説
2 領土
3 領海
4 公海
5 接続水域・継続追跡権
6 排他的経済水域
7 大陸棚
8 深海底
9 公海ふたたび
10 領空
11 宇宙空間
第4章 国家の人的管轄範囲
第5章 外交
1 外交関係と領事関係の区別
2 外交使節団の構成
3 領事機関の構成
4 外交関係・領事関係の発生と消滅
5 外交特権・特権免除
第6章 国際機関
1 国際的な組織にはいろいろな形態のものがある
2 国際機関は国家と同一ではない
3 NGO非政府機構の国際法上の地位
第7章 民族
第8章 個人
1 人権という言葉はいろいろだ
2 国際法における人権の位置づけ
3 国際法の国内における効力
4 国際人権法と国際人道法
第4部 なぜの嵐……理由を考えてみよう
テーマ1 法って何? 他のルールとどこが違うの?
1 まずは一人
2 次は二人……社会が存在し得る
3 三人の場合……社会は複数で階層的になる
4 そこに四人目が入ったら?
5 ところで三人でも四人でも全体のルールがなぜ必要なの?
6 そこで直接民主制と間接民主制だ
7 そこでどう分業されているか見てみよう
8 ところが国際法ではそういう訳にいかないのだ
9 そうすると国際社会において法と契約を区別することは本質的なことなのだろうか?
10 最後に本題に戻る……法とはどんなルールなのか?
テーマ2 書かれたものが法だとは限らない
1 まさか判例には意味がないとは言わないだろうね?
2 でも別のやり方もある
3 そこで慣習の話
テーマ3 採決の方法
1 採決を行う前提
2 投票権
3 決定基準
4 コンセンサス
テーマ4 民事と刑事の区別
1 いきなり民事と刑事を区別してみる
2 でも民事と刑事の区別ってそんなに本質的?
3 でも民事って個人的な利益、刑事は公共の利益の問題じゃないんですか?
4 民事は被害者救済重視だという点をもう一つあげておこう
テーマ5 亡命者と難民
1 問題の前提
2 歴史的背景
3 法的な解析
4 政治家の国外逃亡
5 国籍国に所在する外国大使館への駆け込み
6 国籍国以外の国に所在する第三国関係施設への駆け込み
7 ボートピープル
第5部 Questions & Hints
1 なぜ法解釈学の問題は文章で答を書くのか
2 特に国家試験等の論文問題対策
3 特に国家試験等の論文問題対策……各論もしくは実践編
補章 国際法からはじめた後に
終曲
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