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国際司法裁判所規則

※この翻訳は杉原高嶺「国際司法裁判所制度」有斐閣1996年に搭載されているものであり、杉原教授の著作権が成立している可能性があります。

裁判所規則
採択 1946年5月6日 同日効力発生
   1972年5月10日採択 同年9月1日改正
   1978年4月14日採択 同年7月1日改正

裁判所は、
国際連合憲章第14章を考慮し、
同憲章に附属する裁判所規程を考慮し、
同規程の第30条に基づき、
1978年4月14日に承認した以下の改正裁判所規則を採択する。この規則は、1978年7月1日に効力を生じ、その日をもって1946年5月6日に裁判所が採択し、1972年5月10日に修正した規則に替わる。ただし、1978年7月1日以前に裁判所に付託された事件またはその事件のすべての段階に関しては、この日以前に有効であった規則を引き続き適用する。

第1章 裁判所

第1節 裁判所および補佐員

第1款 裁判所の構成員

第1条
1 裁判所の構成員は、裁判所規程第2条から第15条の規程に従って選挙された裁判官である。
2 裁判所は、特定の事件のために、規程31条に基づいて選任された1人またはそれ以上の者を特別選任裁判官として裁判官席に参与させることができる。
3 本規程の以下の規定において、「裁判所の構成員」という用語は選挙された裁判官を意味し、「裁判官」という用語は、裁判所の構成員および特別選任裁判官を意味する。

第2条
1 3年ごとに行われる選挙において選出された裁判所の構成員の任期は、構成員が選挙されるための空席が生じる年の2月6日から始まる。
2 任期を終了する前の構成員に替わるために選挙された裁判所の構成員の任期は、その選挙の日から始まる。

第3条
1 裁判所の構成員は、その職務の遂行に当たっては、年齢、選挙の期日または在職期間の長さに関係なく平等の地位を有する。
2 裁判所の構成員は、本条4および5に定める場合を除き、この規則の第2条の定めるところに従い、各自の任期が始まる日に応じて席次を占める。
3 任期が同一の日に始まる裁判所の構成員は、その相互の間では年長順に席次を占める。
4 前の任期に引き続き新たな任期について再選された裁判所の構成員は、元の席次を保有する。
5 裁判所長および裁判所次長は、その地位にある間は、裁判所の他のすべての構成員に優先する席次を占める。
6 前各項にしたがって、裁判所長および裁判所次長の次の席次を有する裁判所の構成員は、この規則において「上席裁判官」とする。その構成員が職務を遂行することができない場合には、その構成員の次の席次を有し、かつ職務を遂行することができる裁判所の構成員を上席裁判官とみなす。

第4条
1 規定第20条にしたがって裁判所の各構成員が行う宣言は、次のとおりとする。
「私は、名誉にかけて、誠実に、公平に、かつ良心に従い、裁判官としての自己の職務を遂行し、職権を行使することを厳粛に宣言します。」
2 この宣言は、裁判所の構成員が出席する最初の法廷で行う。この法廷は、当該構成員の任期が始まった後できる限り速やかに開廷し、また必要なときは、この目的のために特別に開廷するものとする。
3 再選された裁判所の構成員は、その新しい任期が前の任期に継続していない場合にのみ、新たに宣言を行う。

第5条
1 辞任しようとする裁判所の構成員は、辞意を裁判所長に伝えるものとし、辞任は、規定3条4の定めるところにより効力を生ずる。
2 辞任しようとする裁判所の構成員が裁判所長である場合には、辞意を裁判所に伝えるものとし、辞任は、規定第13条4の定めるところにより効力を生ずる。

第6条
 規定18条の適用が問題となる場合には、裁判所の当該構成員は、裁判所長または場合によっては裁判所次長から、そのための理由および関係証拠を含む書面によってその旨を通報するものとする。当該構成員は、その後、この目的のために特別に召集される裁判所の非公開の会議において釈明をし、情報を提供し、または説明を行い、かつ自己に対してなされる質問に口頭または書面で答弁する機会を与えられる。裁判所の当該構成員が出席しないで行われるその後の非公開の会議において、その問題は議されるものとする。裁判所の各構成員は、意見を述べ、かつ要求があった場合には投票を行うものとする。

第2款 特別選任裁判官

第7条
1 規程第31条に基づき特定の事件のために選任された特別選任裁判官は、この規則の第17条2、第35条に定める場合と手続に従って、裁判席に着席することが認められる。
2 特別選任裁判官は、他の裁判官と完全に平等な条件でその事件に参与する。
3 特別選任裁判官は、裁判所の構成員に次いで、年長順に席次を有する。

第8条
1 規程第20条および第31条6に従ってすべての特別選任裁判官が厳粛に行う宣言は、この規則の第4条1の定めるところによる。
2 この宣言は、特別選任裁判官が参与する事件の公開の法廷で行う。事件が部によって扱われる場合には、宣言は、その部において同一の方法により行う。
3 特別選任裁判官は、以前の事件においてすでに宣言をしていても、参与する事件ごとに宣言をしなければならない。ただし、同一事件のその後の段階においては新たに宣言を行う必要はない。

第3款 補佐員

第9条
1 裁判所は職権により、または書面手続の終結前に行われる要請により、係争事件または勧告的意見の要請のために投票権なしで裁判所に出席する補佐員を任命することができる。
2 裁判所がこの決定を行う場合には、裁判所長は、補佐員選任に関係のある全ての情報を集めるための措置をとる。
3 補佐員は無記名投票により、かつその事件について裁判所を構成する裁判官の多数により任命される。
4 規程第26条および第29条に規定する部およびその部の長は、同一の権限を付与されるものとし、かつ同一の方法でこれを行使することができる。
5 補佐員は、その職務に就くに当たり、公開の法廷において次の宣言を行わなければならない。
「私は、名誉にかけて、公平に、かつ良心に従い、補佐員としての自己の職務を遂行し、並びに裁判所規程および規則の全ての規定を誠実に遵守することを厳粛に宣言します。

第2節 裁判所長

第10条
1 裁判所長および裁判所次長の任期は、3年ごとに行われる選挙において選出された裁判所の構成員の任期がこの規則の第2条に従って始まる日から始まる。
2 裁判所長および裁判所次長の選挙は、その期日にまたはその後に速やかに行われるものとする。前裁判所長は、引き続き裁判所の構成員である場合には、裁判所長の選挙が行われるまでその職務を継続するものとする。

第11条
1 前裁判所長は、裁判所長の選挙の日において、引き続き裁判所の構成員である場合には、その選挙を主宰する。前裁判所長が裁判所の構成員でなくなるか、もしくは行動することができない場合には、選挙は、本規則の第13条により、裁判所長の職務を遂行する裁判所の構成員が主宰する。
2 選挙は、選挙を主宰する裁判所の構成員が選挙に必要な票数を宣言した後に、無記名投票によって行われる。指名はないものとする。選挙のときに裁判所を構成する構成員の多数の票を得た裁判所の構成員は、選挙されたものと宣言され、直ちにその職務に就くものとする。
3 新裁判所長は、その会議においてまたは次の会議において、裁判所次長の選挙を主宰する。本条2の規定は、その選挙に同様に適用される。

第12条
 裁判所長は、裁判所のすべての会議を主宰する。裁判所長は、裁判所の業務を指揮し、かつ司法事務を監督する。

第13条
1 裁判所長が欠員である場合または裁判所長がその職務を遂行することができない場合には、裁判所長の職務は裁判所次長が遂行し、裁判所次長ができないときは、上席裁判官が遂行する。
2 裁判所長は、規定またはこの規則の規定により、特定の事件に出席しもしくはそれを指揮することができない場合にも、その事件を除くすべてについて裁判所長の職務を引き続き遂行するものとする。
3 裁判所長は裁判所の所在地において裁判所長の職務を継続して行うことができるようにするために必要な措置をとるものとする。裁判所長は、不在の場合には規程およびこの規則に、一致する限りにおいて、裁判所次長に、裁判所次長に支障がある場合には、上席裁判官に職務をとらせることができる。
4 裁判所長は、裁判所長の食を辞任しようとする場合には裁判所次長を、裁判所次長に支障がある場合には上席裁判官を通じて、裁判所にその旨書面をもって申し出るものとする。裁判所次長は、その職を辞任しようとする場合には、裁判所長にその旨を申し出るものとする。

第14条
 裁判所長または裁判所次長の空席が規程第21条1およびこの規則の第10条1に定める任期終了前に生じた場合には、裁判所は残任期間につき空席を補充するかいなかを決定する。

第3節 部

第15条
1 規程第29条により毎年設けられる簡易手続部は、職務上の資格において裁判所長および裁判所次長、並びにこの規則の第18条1に従って選挙される3人の裁判官を含む5人の裁判所の構成員で構成する。さらに2人の裁判所の構成員を予備として毎年選挙する。
2 本条1にいう選挙は、毎年2月6日以後できる限り速やかに行うものとする。部の裁判官は選挙されたときから任務を開始し、次の選挙まで在任する。部の裁判官は再選されることができる。
3 部の裁判官がいずれかの理由により事件に出席できない場合には、当該事件についての2人の予備の裁判官のうち上席の裁判官がこれに替わるものとする。
4 部の裁判官が辞任するかまたはその他の理由で部の裁判官でなくなった場合には、2人の予備の裁判官のうち上席の裁判官がこれに替わり、部の正式な裁判官となる。そのものに交替するために、新たに予備の裁判官が選任される。部の裁判官の欠員が現在の予備の裁判官を超えて生じた場合には、予備の裁判官が部の正式な裁判官になった後なお存在する欠員および予備の裁判官の欠員に関してできる限り速やかに選挙を行う。

第16条
1 裁判所が規程第26条1に定める1または2以上の部を設けることを決定した場合には、当該各部が設けられるべき特定の部類の条件、部の裁判官の数、これらの裁判官が在任する期間および就任する日を決定する。
2 部の裁判官は、その部が処理するために設けられる部類の事件に関し、裁判所の構成員の有する専門知識、専門能力または以前の経験を考慮して、裁判所の構成員の中から本規則の第18条1に従って選挙される。
3 裁判所は、部の廃止を決定することができる。ただし、継続している事件を完結すべき当該部の任務を害してはならない。

第17条
1 規程第26条2に定める特定の事件を裁判する部を設けるための要請は、書面手続が終結するまでの間いつでも提出することができる。裁判所は、一方の当事者から要請を受けた場合には、他方の当事者がそれに同意するか否かを確認するものとする。
2 裁判所長は、両当事者が同意した場合には、部の構成に関して両当事者の意見を確認し、かつ、それを裁判所に報告する。また裁判所長は、規程第31条4の規程を実施するために必要とされる措置をとるものとする。
3 裁判所は、当事者の承認を得て部を構成する構成員の数を決定した場合には、この規則の第18条1の規定にしたがって当該構成員の選挙を行う。部に生じた欠員の補充に関しても、同一の手続がとられるものとする。
4 本条により設けられる部の構成員であって、任期の終了により規程第13条にしたがって退任する者は、事件がいかなる段階に達していても、その事件の全ての段階について出席するものとする。

第18条
1 すべての部の選挙は、無記名投票により行う。選挙のときに裁判所を構成する裁判所の構成員の多数をなす最多数の投票を得た裁判所の構成員は、選挙されたものと宣言される。空席を満たすために必要な場合には、2回以上の投票が行われるものとし、その投票は補充されるべき欠員の数に限られる。
2 部が構成されたときに裁判所長もしくは裁判所次長またはその両者が含まれている場合には、その場合に応じて裁判所長もしくは裁判所次長がその部を主宰する。その他の場合には、部はその長を無記名投票かつ構成員の投票の多数によって選挙する。本項に基づき部が構成されたときに部を主宰する裁判所の構成員は、その部の裁判官である限り引き続き部を主宰するものとする。
3 部の長は、その部によって処理される事件に関しては、裁判所に付託される事件について裁判所長が有するすべての職務権限を行使する。
4 部の長が出席ないし長として行動することができない場合には、部の長の職務権限は、上席でかつ行動することができる部の裁判官によって行使される。

第4節 内部業務の取扱い

第19条
 裁判所の内部司法業務は、規程およびこの規則の規定に従うもので、裁判所がこれについて採択する決議により規律される。

第20条
1 規程25条3に定める定足数は、裁判所のすべての会議に適用する。
2 規程23条3により常に裁判所の指示の下にあるべき義務を負う裁判所の構成員は、病気その他裁判所長に正当に説明される重大な事由により出席できない場合を除く外、すべての会議に出席することを要する。裁判所長は、裁判所に右の事由を報告するものとする。
3 同様に、特別選任裁判官は、裁判所の指示の下になければならず、その参与する事件について開かれるすべての会議に出席しなければならない。特別選任裁判官は、定足数の算定には数えないものとする。
4 裁判所は、総件名簿の状況および当面の活動の必要性を考慮して、裁判所の休暇の期日および期間、並びに規程第23条2に従って裁判所の各構成員に与えられる休暇の期間および条件を定める。
5 裁判所は、同様の考慮を払うことを条件に、裁判所の開廷地で慣行となっている公の休日を尊重するものとする。
6 裁判所長は、緊急の場合には、いつでも裁判所を召集することができる。

第21条
1 裁判所の評議は、非公開とし、かつ秘密とする。ただし、裁判所は、裁判に関する事項以外の事項の評議については、そのいずれかの部分を公表し、または公表を許すことをいつでも決定することができる。
2 裁判官およびもし補佐員がいるときは、この両者のみが、裁判所の裁判の評議に参与する。裁判所書記または裁判所書記補、および必要とされるその他の書記局員はこれに出席するものとする。他のいかなる者も裁判所の許可のない限り出席することはできない。
3 裁判所の裁判評議の調書には、評議の主題または性質、および評決の結果のみを記録する。その調書には、討議の詳細もしくは表明された見解のいずれも記録しない。ただし、いずれの裁判官も自己の行った陳述を調書に挿入することを求めることができる。

第2章 書記局

第22条
1 裁判所は、裁判所の構成員が推挙した候補者の中から無記名投票により裁判所書記を選挙する。裁判所書記は、7年の任期で選挙され、再任されることができる。
2 裁判所長は、裁判所書記の空席が生じた場合には直ちに、またはその空席が任期の終了により生じる場合には直ちにその3箇月前に裁判所の構成員に対し、空席もしくは予定される空席について通知するものとする。裁判所長は、候補者の推挙および情報を、十分な時間をもって受理することができるように候補者名簿の締め切り日を定める。
3 推挙には、候補者に関する適切な情報、特に候補者の年齢、国籍、現在の職業、学位、語学知識および法律、外交または国際機関の業務上の経験に関する情報を掲げるものとする。
4 選挙のときに裁判所を構成する裁判所の構成員の多数の票を得た候補者は、選挙されたものとする。

第23条
 裁判所は、裁判所書記補を選挙する。この規則の第22条の規定は、裁判所書記補の選挙および任期に適用される。

第24条
1 裁判所書記は、その職務に就くに当たり、裁判所の会議において次の宣言を行わなければならない。
「私は、忠実に、慎重に、かつ良心に従い、国際司法裁判所書記として自己に課された職務を遂行し、並びに裁判所規程および裁判所規則のすべての規定を誠実に遵守することを厳粛に宣言します。」
2 裁判所書記補は、その職務に就くに当たり、裁判所の会議において同様の宣言を行わなければならない。

第25条
1 書記局の職員は、裁判所書記の推挙に基づいて裁判所が任命する。ただし、裁判所の定める官職の任命は、裁判所長の承認を得て、裁判所書記がこれを行うことができる。
2 各職員は、その職務に就くに当たり、裁判所書記の立会いの下に、裁判所長の前で次の宣言を行わなければならない。
「私は、忠実に、慎重に、かつ良心に従い、国際司法裁判所職員として自己に課された職務を遂行し、並びに裁判所規程および裁判所規則のすべての規定を誠実に遵守することを厳粛に宣言します。」

第26条
1 裁判所書記は、次の職務を行う。
(a)裁判所への通信の受領および裁判所からの通信の発送を行うこと。特に規程またはこの規則により必要とされる一切の通信、通告および文書の発送を行い、かつ、それらの発送および受領の日付を直ちに確認できるようにしておくこと。
(b)裁判所長の監督の下に、かつ裁判所の定める形式で、訴訟を提起しまたは勧告的意見を要請する文書を書記局が受領した日付順にこれを記載し、かつ番号を付したすべての事件の総件名簿を保管すること。
(c)規程第35条2に基づき安全保障理事会が採択した決議に従って規程の当事国でない国が行う裁判所の管轄権受諾の宣言を保管し、かつ、すべての規程当事国、宣言を寄託しているその他の国および国際連合事務総長に対して、その宣言の謄本を当事者に送付すること。
(d)書記局が受領したすべての訴答書面および付属書類の謄本を当事者に送付すること。
(e)裁判所または部が改定する国の政府およびその他の関係のある政府に対し、規程および関係協定に基づき特権、免除または便宜を受ける資格のある者についての情報を随時提供すること。
(f)裁判所および部の会議に自らまたはその代理が出席し、かつ、その会議の調書を作成すること。
(g)裁判所が必要とするときは、裁判所の公用語への翻訳および通訳の準備および検証のための措置を講ずること。
(i)裁判所のすべての判決、勧告的意見、命令、訴答書面と陳述、および各事件の公判の調書、並びに裁判所が刊行を指示するその他の文書の印刷と刊行に責任を持つこと。
(j)一切の行政事務、特に国際連合の財政手続に従って会計および財政に責任を持つこと。
(k)裁判所およびその活動に関する問い合わせを処理すること。
(l)裁判所と、国際連合の他の期間、専門機関および国際法の法典化と漸進的発達に関係する国際団体並びに会議との間の関係を維持すること。
(m)裁判所およびその活動に関する情報を、各国政府、各国最高裁判所、法曹団体および学術団体、法律大学および法律学校ならびに報道機関が入手し得るように措置を講ずること。
(n)裁判所の紋章および印章、裁判所の公文書、並びに裁判所に寄託されるその他の公文書を保管すること。
2 裁判所は、いつでも裁判所書記にその他の職務を追加することができる。
3 裁判所書記は、職務の遂行について裁判所に対し責任を負う。

第27条
1 裁判所書記官補は、裁判所書記を補佐し、裁判所書記が不在の場合には裁判所書記として行動し、かつ裁判所書記が欠員となった場合には新たに欠員が補充されるまで裁判所書記の職務を行う。
2 裁判所書記および裁判所書記補のいずれも裁判所書記の職務を遂行することができない場合には、裁判所長は、必要な期間、それらの職務を行うために書記局職員1名を任命する。裁判所書記および裁判所書記補の双方が同時に欠員の場合には、裁判所長は、裁判所の構成員と協議した後に、裁判所書記が選任されるまで裁判所書記の職務を行う書記局職員1名を任命する。

第28条
1 書記局は、裁判所書記、裁判所書記補および裁判所書記がその任務の効率的遂行のために必要とするその他の職員をもって構成する。
2 裁判所は、書記局の機構を定めるものとし、かつ、このための提議を行うよう裁判所書記に要請する。

第29条
1 裁判所書記は、永久にその職務を遂行することができなくなったかまたはその義務に重大な違反があった、と裁判所がその構成員の3分の2の多数によって判断した場合のみ、解任されるものとする。
2 裁判所書記は、本条に従って決定が行われる前に、とられる処置についてその理由および関係証拠を含む書面による通報を裁判所長より受けるものとする。裁判所書記は、その後に裁判所の非公開の会議において陳述し、情報を提供しまたは説明を行い、かつ自己に向けられる質問に口頭または書面で答弁する機会を与えられる。
3 裁判所書記補は、同じ理由によって、かつ同じ手続によってのみ解任されるものとする。

第3章 訴訟手続

第1節 裁判所に対する通知および協議

第30条
 この規則に基づき裁判所に宛てられるすべての通知は、別段の規程がある場合を除き、裁判所書記に宛ててするものとする。当事者が行う一切の要請も、口頭手続の中の公開廷においてなされる場合を除き、同様に裁判所書記に宛ててするものとする。

第31条
 裁判所長は、裁判所に付託されるすべての事件において、手続問題に関する当事者の意見を確認しなければならない。裁判所長は、このため当事者の代理人が任命された後直ちに、かつ、その後も必要なときはいつでも当該代理人の出頭を求めるものとする。

第2節 特定の事件に関する裁判所の構成

第32条
1 裁判所長が事件の当事者の一方の国民である場合には、裁判所長は、当該事件について裁判所長の職務権限を行使してはならない。裁判所次長または上席裁判官が裁判所長として行動するように要請された場合にも、同一の規則を適用する。
2 裁判所が口頭手続のために開廷する日に事件を主宰する裁判所の構成員は、新たに裁判所長または裁判所次長が選挙されても、事件の当該段階を完結するまで引き続いて主宰する。その構成員が主宰することができなくなった場合には、当該事件の裁判長の職務は、この規則の第13条に従って、かつ口頭手続のために招集される日の裁判所の構成に基づいて決定される。

第33条
 この規則の第17条に定める場合を除いて、任期の終了により規程第13条3に従って退任する裁判所の構成員は、その退任の日以前に口頭手続のために裁判所が招集された場合は、事件のその段階の完結まで、引き続き出席し、同項に定められた義務を果たさなければならない。

第34条
1 規程第17条2の適用に関して疑義が生じた場合、又は規程第24条の適用に関して意見が一致しない場合には、裁判所長は、それについて決定を行うべき裁判所の構成員に通告しなければならない。
2 当事者が、前項に定める規程の規定の適用に関連があると考え、かつ裁判所に知られていないと信ずる事実について裁判所の注意を喚起しようとする場合には、その当事者は、その事実を親書をもって裁判所長に対し通知するものとする。

第35条
1 当事者は、事件において特別選任裁判官を選任するため規程第31条により与えられた権利を行使しようとする場合には、できる限り速やかにその旨を裁判所に通知するものとする。選任されるべき裁判官の氏名および国籍をその時に示すことができない場合には、当事者は、答弁書の提出のために定められた期限の2箇月前までに裁判所に対して選任した裁判官の氏名および国籍を通知し、かつ簡潔な経歴書を提出しなければならない。特別選任裁判官は、その者を選任した当事国の国籍以外の者でもよい。
2 当事者は、双方の当事者が同様に差し控えることを条件に特別選任裁判官の選任を差し控えようとする場合には、裁判所にその旨通知するものとする。この場合、裁判所は、そのことを他方の当事者に通知する。その後に他方の当事者が特別選任裁判官を選任する意思を通知し、または選任した場合には、裁判所長は、裁判官の選任をあらかじめ差し控えていた当事者のために期限を延長することができる。
3 特別選任裁判官の選任に関する通知の謄本は、裁判所書記が他方の当事者に送付する。他方の当事者は、裁判所長が定める期限内に希望する意見を提出するよう要請されるものとする。この期限内に他方の当事者から異議が提出されず、かつ裁判所に何ら異議が生じない場合には、両当事者には、その旨が通知されなければならない。
4 異議または疑義が生じた場合には、その問題は、必要があれば当事者の意見を聴取した後に、裁判所が決定する。
5 任命を受諾した後に出席することができなくなった特別選任裁判官は、交替することができる。
6 特別選任裁判官は、その参与する理由が存在しなくなったと認められる場合には、裁判官席に出席することをやめなければならない。

第36条
1 2以上の当事者が同一の利害関係にあり、従って1当事者とみなされ、かつ裁判官席にそれらの当事者のいずれかの国籍を有する裁判所の構成員がいないと裁判所が認める場合には、裁判所は、それらの当事者が共同して1名の特別選任裁判官を選任するための期限を定める。
2 同一の利害関係にあると裁判所が認めた当事者のいずれかが、自己に異なった利害関係が存在することを主張し、またはその他の何らかの異議を提起した場合には、その問題は、必要があれば当事者の意見を聴取した後に、裁判所が決定する。

第37条
1 当事者のいずれかの国籍を有する裁判所の構成員が、事件のいずれかの段階において出席できなくなった場合には、その当事者は、裁判所または裁判所が開廷中でないときには裁判所長が定める期限内に特別選任裁判官を選任する権利を有する。
2 同一の利害関係にある当事者は、それらの国のいずれかの国籍を有する裁判所の構成員が事件のいずれかの段階において出席できなくなった場合には、裁判官席にそれらの国のいずれかの国籍を有する裁判官を有しないものとみなされる。
3 当事者の国籍を有する裁判所の構成員が、事件の書面手続の段階の終了前に出席することができるようになった場合には、その構成員は、その事件において裁判官席に再びつくことができる。

第3節 裁判所の手続

第1款 手続の開始

第38条
1 訴訟が規程第40条1に定める請求により開始される場合には、その請求には、請求を提起する当事者、請求の相手当事者および紛争の主題を示さなければならない。
2 請求には、裁判所の管轄権の基礎とされるべき法的根拠をできる限り記載しなければならない。請求には、また、請求内容を正確に記載し、その基礎となる事実および理由を簡単に記載しなければならない。
3 請求の原本には、それを提出する当事者の代理人もしくは裁判所の所在する国に駐在する当該当事者の外交代表または正規に授権された他の者が署名しなければならない。請求が当事者の外交代表以外の者によって署名された場合には、その署名は、当事者の外交代表もしくは請求当事者の外務省の権限ある当局によって認証されなければならない。
4 裁判所書記は、請求の認証謄本1通を相手当事国に直ちに送付しなければならない。5 請求国が、請求相手国がのちに与える同意ないし表明する同意によって裁判所の管轄を設定しようとする場合には、その請求は、その相手国に送付されなければならない。ただし、請求の相手国が当該事件のために裁判所の管轄権に同意するまでは、その請求は総件名簿に記載してはならず、かつ手続上いかなる措置もとってはならない。

第39条
1 規程第40条1に従い、特別の合意の通知によって訴訟を裁判所に提起する場合には、その通告は共同でまたは1もしくはそれ以上の当事者で行うことができる。通告が共同でない場合には、裁判所書記は、通告の認証謄本1通を他方の当事者に直ちに送付しなければならない。
2 各場合において、通告には特別の合意の原本または認証謄本を添付しなければならない。この通告はまた当該特別の合意において紛争の正確な主題と紛争の当事者が明らかでない場合には、それを明示しなければならない。

第40条
1 本規則第38条5に定める場合を除き、訴訟が開始された以後の当事者のためのすべての措置は、代理人がこれを行う。代理人は、事件に関するすべての通知が送付されるべき住所を裁判所の所在地に有しなければならない。当事者の代理人に宛てられた通知は、当該当事者に宛てられたものとみなされる。
2 請求によって訴訟を開始する場合には、原告の代理人の指名を記載しなければならない。被告当事者は、請求の認証謄本を受領すると同時に、またはその後できる限り速やかに、代理人の氏名を裁判所に通知するものとする。
3 特別の合意の通知によって訴訟を開始する場合には、通告を行う当事者はその代理人の氏名を記載しなければならない。特別の合意の他のすべての当事者は未だその代理人の氏名を通知していない場合には、右の通告の認証謄本を裁判所書記から受領すると同時にまたはできる限り速やかに、その代理人の氏名を通知するものとする。

第41条
 規程の当事国でない国で、規程第35条2に基づき安全保障理事会が採択した決議に従った宣言により裁判所の管轄を受諾している国が訴訟を開始する場合、当該宣言をあらかじめ裁判所書記に寄託していないときは、それを寄託しなければならない。前記の宣言の有効性または効力に関して問題が生じた場合には、裁判所が決定する。

第42条
 裁判所書記は、裁判所の訴訟を開始する請求または特別の合意の通知の謄本を(a)国際連合事務総長、(b)国際連合加盟国および(c)裁判所で裁判を受けることができるその他の国に送付する。

第43条
 事件に関係する国以外の国が当事国である条約の解釈が規程第63条1に定める意味において問題となる場合には、裁判所は、その問題に関しいかなる指示を裁判所書記に与えるかを検討する。

第2款 書面手続

第44条
1 裁判所は、この規則第31条に基づき裁判所長が入手した情報に照らして、とりわけ訴答書面の数および提出順序ならびに提出期限を決定するために必要な命令を出さなければならない。
2 本条1に基づく命令を発するに当たっては、不当な遅延を生じさせない当事者のいかなる合意も考慮に入れなければならない。
3 裁判所は、関係当事者の要請があった場合において、その要請が十分に根拠をもつことが確認されるときは、提出期限を延長し、または定められた期限の終了後に取られた措置を有効とみなすことができる。いずれの場合にも相手当事者は、その見解を述べる機会を与えなければならない。
4 裁判所が開廷中でないときは、本条に基づく裁判所の権限は、裁判所の事後の決定を害さないことを条件として、裁判所長がこれを行使する。第31条に定める協議の結果、この規則の第45条2または第46条2の適用に関して当事者間に強い意見の相違のあることが明らかとなったときは、この問題を決定するために裁判所が召集される。

第45条
1 請求によって開始される事件の訴答書面は、原告の申述書、被告の答弁書の順序で提出する。
2 裁判所は、当事者が合意する場合または裁判所が職権によりもしくは一方の当事者の要請によって、原告の抗弁書および被告の再抗弁書が必要になったことを決定した場合には、それら訴答書面の提出を許可しまたは提出を指示することができる。

第46条
1 特別の合意の通告によって開始される事件においては、訴答書面の数および順序は裁判所が当事者の意見を確かめた後に別段の決定を行わない限り、当該合意の定めるところによる。
2 特別の合意が前記の規定を有せず、かつ当事者がその後訴答書面の数および順序に関して合意するに至らない場合には、各当事者は、同一期限内に申述書および答弁書を提出する。裁判所は、必要と認めない限り抗弁書および再抗弁書の提出を許可してはならない。

第47条
 裁判所は、2以上の事件において手続を合併することをいつでも指示することができる。また裁判所は、書面または口頭手続を証人の召喚を含めて同時に行うことを指示することができる。さらに裁判所は、正式の併合を行うことなく、これらの手続のいかなる段階においても同時に手続を進めることを指示することができる。

第48条
 訴訟手続きの各段階の終了時期は、一定期間を指定して定めることができる。ただし、常に明確な日を指定しなければならない。この期限は事件の性質が許す限り短いものとする。

第49条
1 申述書には、関係事実の陳述、法律上の陳述および申立を記載する。
2 答弁書には、申述書に掲げられた事実の認否、必要があるときは事実の追加、申述書中の法律上の陳述に関する意見、それに応答する法律上の陳述および申立を記載する。
3 裁判所の許可を得て提出される抗弁書および再抗弁書は、当事者の主張を反復するだけではなく、当事者の主張がなお分かれる争点を明らかにするようにしなければならない。
4 いずれの訴答書面も、すでに提出された議論とは異なる事件の各関連段階における当事者の申立を掲げるか、または以前に行った申立を確認しなければならない。

第50条
1 すべての訴答書面の原本には、訴答書面に記載した主張を指示するために引用した一切の関係書類の認証謄本を添付しなければならない。
2 書類の一部のみが関係ある場合には、当該訴答書面にとって必要な部分のみの抜粋を添付することを要する。全書類の謄本は、それがすでに公表されており、かつ容易に参照し得るものである場合を除き、書記局に寄託しなければならない。
3 訴答書面に添付する一切の書類の目録は、訴答書面を提出するときに提出しなければならない。

第51条
1 当事者が書面手続を裁判所の2つの公用語のうちの1つですべて行うことに合意した場合には、訴答書面はその公用語のみで提出しなければならない。当事者がこのような合意をしない場合には、いかなる訴答書面もまたは訴答書面のいかなる部分も、いずれかの公用語で提出するものとする。
2 規定第39条3に従ってフランス語または英語以外の言語を使用する場合には、訴答書面を提出する当事者が正確なものと認証したフランス語または英語の訳文を各訴答書面の原本に添付しなければならない。
3 訴答書面の附属書類が裁判所のいずれかの公用語にもよるものでない場合には、訴答書面を提出する当事者が正確なものと認証した裁判所の公用語のうちのいずれか1つの訳文を添付しなければならない。訳文は、附属書類の一部または附属書類の抜粋に限ることができる。この場合には、どの部分の訳文であるかを示す説明文を添付しなければならない。ただし、裁判所は、より広範なまたは完全な訳文を提出するよう要求することができる。

第52条
1 すべての訴答書面の原本は、代理人が署名して書記局に提出する。この原本には、規程第43条4に従って他方の当事者に送付するための訴答書面の認証謄本、附属書類および訳文を添付する。また書記局が要求する数の謄本を追加して添付する。ただし、その後に必要が生じたときは、前記の数を増加することを妨げない。
2 すべての訴答書面には日付を付すものとする。訴答書面を一定の期日までに提出しなければならない場合に、裁判所がその有効期日とするのは、書記局において当該訴答書面を受理する日とする。
3 裁判所書記が、当事者の要請により訴答書面を印刷するために取り計らいをする場合には、その原本は、印刷した訴答書面が期限の終了前に書記局に提出できるようにするため十分な時間の余裕をおいて提出されなければならない。この印刷は、当該当事者の責任の下で行われる。
4 既に提出された書類中の誤りは、他方の当事者の同意または裁判所長の許可を得ていつでも訂正することができる。このように行われた訂正は、その訂正が関係する訴答書面と同じ方法で他方の当事者に通知されなければならない。

第53条
1 裁判所または裁判所が開廷中でないとき裁判所長は、当事者の意見を確認した後、訴答書面および附属書類の謄本を、裁判所で裁判を受けることができる国であってこのような謄本の提供を要請する国が入手できるようにいつでも決定することができる。
2 裁判所は、当事者の意見を確認した後、訴答書面および附属書類の謄本を口頭手続の開始のときにまたは口頭手続の開始の後に一般に入手できるように決定することができる。

第3款 口頭手続

第54条
1 事件は、書面手続の終結とともに弁論の用意ができたものとする。口頭手続の開始の日は裁判所が定める。また、裁判所は、必要な事態が生じたときは、口頭手続の開始または継続を延期することを決定することができる。
2 裁判所は、口頭手続の開始の日を定めまたは延期する場合は、特定の事件の緊急性を含めて、この規則の第74条の定める優先順位およびその他の特別の事情を考慮しなければならない。
3 裁判所が開廷中でないときは、本条に基づく裁判所の権限は裁判所長が行使する。

第55条
 裁判所は、望ましいと認める場合には、規程第22条1に従って、事件のその後の手続の全部または一部を裁判所の所在地以外の地で行うことを決定することができる。裁判所は、この決定をする前に、当事者の意見を確認しなければならない。

第56条
1 いずれの当事者も、書面手続の終結後は、他方が同意する場合または本条2に規定する場合を除く外、追加して書類を裁判所に提出することはできない。新たな書類の提出を希望する当事者は、その書類の原本または認証謄本を書記局が要求する数の謄本を添えて提出する。書記局は、他方の当事者にその旨を通知する責任を負い、かつ裁判所に通報しなければならない。他方の当事者が、この書類の提出に異議を申し立てない場合には、同意を与えたものとみなされる。
2 裁判所は、同意がない場合において、両当事者の意見を聴取した後、当該書類を必要と認めるときは、その提出を許可することができる。
3 新たな書類が本条1または2により提出される場合には、他方の当事者は、その書類について意見を述べ、かつ、その意見を補強するための書類を提出する機会を与えられる。
4 規程第43条または本条に従って提出されたものではない書類については、その書類が容易に参照し得る刊行物の一部でない限り、口頭手続中その内容に言及することができない。
5 本条の規程の適用は、それ自体、口頭手続の開始または進行を遅延させる根拠とはならない。

第57条
 各当事者は、書類の提出に関するこの規則の規定を害することなく、その提出しようとする証拠または裁判所に対して入手を要請しようとする証拠に関する情報を、口頭手続の開始前に十分な時間の余裕をおいて裁判所書記に通知するものとする。この通知には、その当事者が召喚しようとする証人および鑑定人の氏名、国籍、経歴および住所を記載し、かつ、その証言の対象となる1または2以上の論点の要旨を併記する。さらに、他方の当事者に送付するためにこの通知の謄本1通を提出しなければならない。

第58条
1 裁判所は、当事者がその弁論を証拠の提出前に行うべきか、その後に行うべきかを決定する。ただし、当事者は提出された証拠に関して意見を述べる権利を保持する。
2 当事者が聴取を受ける順序、証拠を取り扱う方法および証人と鑑定人を尋問する方法、ならびに各当事者のために聴取を受ける補佐人と弁護人の数は、この規則の第31条に従って当事者の意見を確認した後、裁判所が決定する。

第59条
 裁判所における弁論は、公開とする。ただし、裁判所が別段の決定をした場合、または両当事者が公開としないことを請求した場合には、この限りでない。この決定または請求は、弁論の全部または一部のいずれかについて、かつ、いつでも行うことができる。

第60条
1 各当事者のために行われる口頭陳述は、弁論における当該当事者の主張を十分にていじするために必要とされる限度内で、できる限り簡潔に行われなければならない。従って口頭陳述は、当事者の意見が分かれる争点に向けられなければならず、訴答書面において取り扱った事項全般に言及しまたは当該書面に掲げられた事実および議論を単に反復するものであってはならない。
2 弁論において当事者が行う最後の陳述を終了するにあたって、その代理人は、議論の要点を繰り返すことなく当該当事者の最終申立を朗読するものとする。代理人が署名したこの申立の原本の謄本は、裁判所に提出され、かつ他方の当事者に送付される。

第61条
1 裁判所は、弁論の前または弁論中いつでも、裁判所が特に当事者による陳述を希望する論点もしくは争点、または十分に議論が尽くされたと考える論点もしくは争点を、指摘することができる。
2 裁判所は、弁論中、代理人、補佐人および弁護人に質問を行い、かつ、これらの者に説明を求めることができる。
3 各裁判官は、質問を行う同様の権利を有する。ただし、各裁判官は、この権利を行使する前に、規程第45条により弁論を統制する責任をもつ裁判所長にその意向を知らせなければならない。
4 代理人、補佐人および弁護人は、直ちにまたは裁判所長が定める期間内に答弁することができる。

第62条
1 裁判所は、争点となっている問題の一切を明らかにするために、裁判所が必要と考える証拠を提出しもしくは説明を行うように当事者にいつでも要請することができ、またはこの目的のためにその他の情報を自ら求めることができる。
2 裁判所は、必要な場合には、手続中、証拠を提示するための証人または鑑定人の出廷を求めることができる。

第63条
1 当事者は、この規則第57条に従って裁判所に通知された名簿に記載されている証人または鑑定人を召喚することができる。弁論中のいかなるときでも一方の当事者が、前記の名簿にその氏名が記載されていない証人または鑑定人の召喚を欲する場合には、その当事者は、裁判所および他方の当事者にその旨を通告し、かつ第57条の要求する情報を提出しなければならない。右の証人もしくは鑑定人は、他方の当事者が異議を唱えずまたはその証言が関連性を有するものと裁判所が認める場合には、召喚される。
2 裁判所または裁判所が開廷中でないときは裁判所長は、一方の当事者の要請によりまたは職権により、裁判所以外の場所で証人の尋問を行うための必要な措置をとる。

第64条
 特別な事情により裁判所が異なった形式の用語を決定する場合を除き、
(a) 各証人は、証言を行う前に次の宣言を行わなければならない。
「私は、私の名誉と良心にかけてすべての真実を述べ、真実以外の何ものをも述べないことを厳粛に宣言します」
(b) 各鑑定人は、陳述を行う前に次の宣言を行わなければならない。
「私は、私の名誉と良心にかけてすべての真実を述べ、真実以外の何ものをも述べないことを厳粛に宣言し、また、私の陳述が誠実な信念によるものであることを厳粛に宣言します。」

第65条
 証人および鑑定人は、裁判所長の統制の下で当事者の代理人、補佐人または弁護人の尋問を受ける。証人または鑑定人は、裁判所長および裁判官の質問を受ける。証人は、証言を行う前には、法廷の外にいなければならない。

第66条
 裁判所は、事件が関係する場所での証拠の収集に関するその職務を遂行することを、職権によりまたは一方の当事者の要請に基づき、いつでも決定することができる。ただし、両当事者の見解を確かめた後に裁判所が決定する条件に従うものとする。必要な措置は、規程第44条に従ってとるものとする。

第67条
1 裁判所は、調査または鑑定意見を嘱託する必要があると認める場合には、当事者の意見を聴取した後、この旨の命令を発する。この命令には、調査または鑑定意見の主題を明示し、かつ調査を行う者または鑑定人の人数および任命方式を記載し、並びにその従うべき手続を定める。裁判所は、適当な場合には調査を行うためにまたは鑑定意見を述べるために任命された者に対して厳粛な宣言を行うように要請する。
2 調査に関する報告または記録、および鑑定意見は、すべて当事者に通知される。当事者は、それについて意見を述べる機会を与えられる。

第68条
 この規則の第62条2に従って裁判所の招請により出廷する証人および鑑定人、並びに第67条1に従って調査を行うためにまたは鑑定意見を述べるために任命された者は、適当な場合には裁判所の資金からその手当を支給される。

第69条
1 裁判所は、口頭手続の終結前のいかなるときにおいても、職権により又はこの規則の第57条に規定する通知を受けた一方の当事者の要請により、規程第34条に従って公的国際機関に対し、裁判所に係属する事件に関係のある情報を提供するように要求することができる。裁判所は、当該機関の行政職員の長と協議の後、この情報が口頭で提出されるべきか又は書面で提出されるべきか、及びその提出期限を決定する。
2 公的国際機関は、裁判所に係属する事件に関係のある情報を自発的に提供することが適当であると認める場合には、申述書の形式で書面手続の終結前に書記局に提出する。裁判所は、適当と認めて行う質問に対する回答の形式で、口頭または書面により、この情報を補足することを要求する権利を有し、また当事者がこのように提供された情報に関して口頭又は書面により意見を述べることを許可する権利を有する。
3 裁判所書記は、規程第34条3の定める状況が生じた場合には、裁判所又は裁判所が開廷中でないときは裁判所長の指示に基づき、同項に規定する手続をとる。裁判所又は
裁判所が開廷中でないときは裁判所長は、裁判所書記が書面手続の謄本を送付した日から、かつ当該公的国際機関の行政職員の長と協議の後、当該機関がその意見を書面で裁判所に提出することができる期限を定める。この意見は、当事者に送付されるものとし、当事者及び前記機関の代表者は、口頭手続中に討議することができる。
4 前各項の「公的国際機関」という用語は、国家によって構成される国際機関を意味する。

第70条
1 裁判所による反対の決定がない限り、弁論において裁判所の一公用語で行われた発言、陳述及び証言は、すべて他の公用語に通訳される。この発言、陳述及び証言が公用語以外の言語で行われた場合には、裁判所の2つの公用語に通訳される。
2 規程第39条3に従ってフランス語又は英語以外の言語を使用する場合には、2つの公用語のうちの1つに通訳するために必要な措置は、当該当事者がとる。但し、裁判所書記は、当事者のために行われた証言につき当事者が提供した通訳を検証するために必要な措置をとる。裁判所の召喚により出頭する証人又は鑑定人の場合には、通訳のための措置は、書記局がとる。
3 当事者は、裁判所の公用語以外の言語で自国のための発言、陳述又は証言を行おうとする場合には、裁判所書記がそれに必要な措置をとるのに十分な時間の余裕をもってその旨を書記に通告するものとする。
4 当事者が提供する通訳者は、当該事件において最初に通訳をする前に、公開の法廷で次の宣言を行わなければならない。
「私は、私の名誉と良心にかけて私の通訳が忠実かつ完全なものであることを厳粛に宣言します」。

第71条
1 裁判所書記は、使用された裁判所の公用語で各弁論の逐語的記録を作成する。使用された言語が裁判所の2つの公用語のいずれでもない場合には、逐語的記録は、裁判所の公用語の一つで作成される。
2 発言又は陳述が裁判所の公用語以外の言語で行われる場合には、自己のためにこの発言又は陳述を行おうとする当事者は、あらかじめ書記局に公用語の1つによるその本文を提供するものとする。この本文は、逐語的記録の関連部分を構成する。
3 逐語的記録の原本には、その冒頭に出席裁判官の氏名、並びに当事者の代理人、補佐人および弁護人の氏名を記載する。
4 原本の謄本は、事件に参与した裁判官および当事者に配付される。当事者は、裁判所の監督の下に、自己のために行われた発言および陳述の原本を訂正することができる。但し、いかなる場合にも前期の訂正は陳述の意義および趣旨に影響を及ぼしてはならない。裁判官も同様に、その行った発言の原記を訂正することができる。
5 証人および鑑定人は、その行った証言または陳述に関する原本の当該部分を閲覧し、かつ当事者と同様の方法でその原本を訂正することができる。
6 裁判所長および裁判所書記が署名した訂正済の確定原本の認証謄本1通を、規程第47条の適用上、公判廷の公式な調書とする。公開弁論の調書は、裁判所が印刷し、かつ公表する。

第72条
 この規則の第61条に従って行われた質問に対する一方の当事者の書面による答弁または第62条に従って一方の当事者が提出した証拠もしくは行った説明で、口頭手続の終結後に裁判所が受領したものは、他方の当事者に通報され、他方の当事者は、それに関して意見を述べる機会を与えられる。必要がある場合には、このために口頭手続を再開することができる。

第4節 附随手続

第1款 仮保全措置

第73条
1 仮保全措置の指示を求める書面による要請は、その要請の関係する事件の手続中いつでも一方の当事者により行うことができる。
2 この要請には、その理由、要請が認められなかった場合に生じうる結果、および要請する措置を明示しなければならない。裁判所書記は、直ちに認証謄本1通を他方の当事者に送付するものとする。

第74条
1 仮保全措置の指示の要請は、他のすべての事件に優先する。
2 裁判所は、この要請が行われたときに開廷中でない場合には、緊急事項としてこの要請に関する決定の手続を行うために直ちに招集される。
3 裁判所または裁判所が開廷中でないときは裁判所長は、両当事者に申立の機会を与える弁論の期日を定めなければならない。裁判所は口頭手続の終結前に裁判所に提出される一切の意見を受理し、かつ考慮に入れなければならない。
4 裁判所が審理している間、裁判所長は、仮保全措置の要請について裁判所が行うすべての命令が適切な効果をもちうるように行動することを両当事者に要請することができる。

第75条
1 裁判所は、事件の状況がいずれかの若しくはすべての当事者が従うべき仮保全措置の指示を必要としているか否かを、職権によりいつでも審査することができる。
2 裁判所は、仮保全措置の要請があったときには、要請された措置とは全体的に若しくは部分的に異なる措置を指示し、又は要請を行った当事者自身が従うべき措置を指示することができる。
3 仮保全措置の指示の要請の却下は、その要請を行った当事者が同一の事件において新事実に基づく新たな要請を行うことを妨げるものではない。

第76条
1 裁判所は、一方の当事者の要請により、事情の変更によって仮保全措置に関する決定を撤回又は修正することが正当であると判断する場合には、事件の最終判決の前にいつでも右措置を撤回又は修正することができる。
2 この撤回若しくは修正を求める当事者の請求は、関連があると考える事実の変更を明示しなければならない。
3 裁判所は、本条1の決定を行う前に、当事者に対してこの問題に関する意見を提出する機会を与えなければならない。

第77条
 この規則の第73条及び第74条に従って裁判所が指示するすべての措置並びにこの規則の第76条1に従って裁判所がとるすべての決定は、規程第41条2に従って安全保障理事会に通告するために、国際連合事務総長に直ちに通告されなければならない。

第78条
 裁判所は、指示した仮保全措置の履行に関連する一切の問題について、当事者から情報を求めることができる。

第2款先決的抗弁

第79条
1 裁判所の管轄権若しくは請求の受理可能性に対する被告のすべての抗弁又は本案手続に進む前に決定を求められるその他の抗弁は、答弁書の提出につき定められた期限内に書面で提出しなければならない。被告以外の当事者が提出するすべての抗弁は、その当事者の最初の訴答書面の提出につき定められた期限内に提出しなければならない。
2 先決的抗弁には、抗弁の基礎とされる事実と法、申立及び援用書類の目録を掲げ、さらに当該当事者が提出を希望する証拠を掲げる。援用書類の謄本をこれに添付しなければならない。
3 先決的抗弁を書記局が受領すると同時に、本案手続は停止され、裁判所又は裁判所が開廷中でないときは裁判所長は、他方の当事者がその意見及び申立について書面による陳述を提出する期限を定める。右書面には援用書類を添付し、提出を希望する証拠を掲げる。
4 裁判所が別段の決定をしない限り、その後の手続は口頭によって行う。
5 本条2及び3にいう訴答書面における事実及び法の陳述、並びに4に定める弁論において提出される陳述及び証拠は、抗弁に関係のある事項に限定しなければならない。
6 裁判所は、手続の予備的段階で裁判所の管轄権を決定す
ることができるようにするため、必要なときはいつでも、
両当事者に対しその争点に関する法及び事実のすべての問題を論議し、かつ、すべての証拠を提示するように要求することができる。
7 裁判所は、当事者の意見を聴取した後、判決の形式で決定を下す。裁判所は、この決定により、抗弁を認容もしくは却下するか、またはその事件の状況により抗弁がもっぱら先決的な性質を有するものではないことを宣言するものとする。もし裁判所が、抗弁を却下し、または抗弁がもっぱら先決的な性質を有するものではないことを宣言した場合には、裁判所はその後の手続の期限を定める。
8 裁判所は、本条1に従って提出された抗弁が本案の審理手続内で意見聴取され、かつ決定されるべき旨の当事者間の合意を有効なものとしなければならない。

第3款 反訴

第80条
1 反訴は、他方の当事者の請求の主題と直接関係があり、かつ裁判所の管轄権に属する場合に提出することができる。
2 反訴は、それを提出する当事者の答弁書において行われ、かつ当該当事者の申立の一部として提出されるものとする。
3 裁判所は、反訴として提出された問題と他方の当事者の請求の主題との間の関連について疑義が生じた場合には、両当事者の意見を聴取した後、このように提出された問題を原手続に併合するか否かを決定する。

第4款 参加

第81条
1 規程第62条に基づく参加の許可を求める要
請は、この規則の第38条3に定める方法で署名され、できる限り速やかに、かつ書面手続の終結前に提出されなければならない。但し、特別の事情のある場合には、その後の段階に提出された要請も認められる。
2 要請には、代理人の氏名を記載する。この要請には、それが関係する事件を明記し、次の事項を記載する。
(a)参加を要請する国が、その事件の裁判によって影響を受けると考える法律的性質の利害関係
(b)参加の明確な目的
(c)参加を要請する国と事件の当事者との間に存在すると主張される管轄権の基礎
3 この要請には、添付する援用書類の目録を記載する。

第82条
1 規程第63条により付与された参加の権利を援用しようとする国は、この規則の第38条3の定める方法で署名したその旨の宣言書を提出しなければならない。この宣言書は、できる限り速やかに、かつ口頭手続の開始と定められた期日より前に提出されなければならない。但し、特別の事情のある場合には、その後の段階に提出された宣言書も認められる。
2 この宣言書には、代理人の氏名を記載する。宣言書には、関係する事件及び条約を明記し、並びに次の事項を記載する。
(a)宣言書の提出国が自ら条約の当事国であると考える根拠の説明
(b)解釈が問題となると考える条約の条項の明示
(c)宣言提出国が問題とする条項の解釈についての陳述
(d)添付する援用書類の目録
3 この宣言書は、解釈が問題となる条約の当事国であると自ら考える国で、規程第63条に定める通告を受けなかった国も提出することができる。

第83条
1 規程第62条に基づく参加の許可を求める要請の認証謄本、または、規程第63条に基づく参加の宣言書の認証謄本は、直ちに事件の当事者に送付されなければならない。当該事件の当事者は、裁判所または裁判所が開廷中でないときは裁判長が定める期間内に、自己の意見を書面で提出するよう要請される。
2 裁判所書記は、前記の謄本を、(a)国際連合事務総長、(b)国際連合加盟国、(c)裁判所で裁判を受けることができるその他の国、および(d)規程第63条に基づいて通知を受けるその他の国に送付しなければならない。

第84条
1 裁判所は、規程第62条に基づく参加の許可を求める要請が認められるか否か、および規程第63条に基づく参加が認められるか否かを、裁判所が事件の状況に照らして別段の決定をしない限り、優先事項として決定する。
2 この規則の第83条に基づき定められた期限内に参加の許可を求める要請または参加の宣言書の認容について異議が生じた場合には、裁判所は、決定を行う前に、参加を要請する国および両当事者の意見を聴取しなければならない。

第85条
1 規程第62条に基づく参加の許可の要請が認められた場合には、参加する国は、訴答書面および附属書類の謄本の提供を受け、かつ裁判所が定める期限内に書面による陳述を提出することができる。この陳述について当事者が口頭手続の前に書面で意見を提出しようと希望する場合には、そのための期限を定める。裁判所が開廷中でないときは、これらの期限は裁判所長が定める。
2 前項に従って定められる期限は、当該事件の訴答書面に関してすでに定められている期限にできる限り一致させなければならない。
3 参加する国は、口頭手続中に、参加の主題に関しその意見を提出することができる。
第86条
1 規程第63条に基づく参加が認められた場合には、参加する国は、訴答書面および附属書類の謄本の提供を受け、かつ裁判所または裁判所が開廷中でないときは裁判所長が定める期限内に、参加の主題に関してその意見を書面で提出することができる。
2 前記の意見は、当事者および参加を認められたその他の国に通知される。参加する国は、口頭手続中に、参加の主題に関してその意見を提出することができる。

第5款 本裁判所への特別付託

第87条
1 他の国際機関において審理の対象となっていた問題に関して、係争事件が現行の条約または協定に従って本裁判所に提起された場合には、係争事件に関する規程および規則の規定を適用する。
2 手続を開始する請求には、関係国際機関の決定もしくはその他の行為を明記し、その謄本を添付する。この請求には、右の決定もしくは行為に関して生じた問題で、本裁判所に付託される紛争の主題である問題の明確な陳述を記載しなければならない。

第6款 訴えの取下げ

第88条
1 本案に関する最終判決が言い渡される前に当事者が訴えの取下げに合意した旨を書面をもって、共同又は単独で、裁判所に通報した場合には、裁判所は、訴えの取下げを記録し、かつ当該事件を総件名簿から削除することを指示する命令を発する。
2 当事者が和解に達したことにより訴えの取下げに合意し、かつ当事者がその旨希望するときは、裁判所は、総件名簿から当該事件を削除する命令にこの事実を記録し、その命令又は附属書類に和解条件を記録することができる。
3 裁判所が開廷中でないときは、本条に基づく命令は裁判所長が発することができる。

第89条
1 請求によって開始された手続中に原告が手続を続行しないことを裁判所に書面で通知し、かつ書記局がこの通知を受領した日に被告が未だその手続において何らの措置もとっていなかった場合には、裁判所は、訴えの取下げを公式に記録し、かつ当該事件を総件名簿から削除することを指示する命令を発する。裁判所書記は、この命令の謄本を被告に送付するものとする。
2 訴えの取下げの通知を受領したときに被告がすでにその手続において何らかの措置をとっていた場合には、裁判所は、被告が訴えの取下げに異議があるか否かを述べるべき期限を定める。この期限の終了前に訴えの取下げに関して異議の申立がないときは、黙認されたものとみなし、裁判所は、訴えの取下げを公式に記録し、かつ当該事件を総件名簿から削除することを指示する命令を発する。異議の申立があったときは、手続を続行する。
3 裁判所が開廷中でないときは、本条に基づく裁判所の権限は裁判所長が行使することができる。

第5節 部の手続

第90条
 規程第26条及び第29条に掲げる部の手続は、規程及びこの規則の特に部に関する規定に従うことを条件として、裁判所における係争事件に適用される本規則の第1章から第3章までの規定によって規律される。

第91条
1 規程第26条1又は第29条に従って設けられる部の一つにより事件を処理することを希望するときは、この旨の要請は、手続を開始する書類で行うか、又はその書類に添付しなければならない。両当事者が合意する場合は、この要請は認められるものとする。裁判所長は、書記局がこの要請を受領すると同時にそれを当該部の裁判官に通知する。裁判所長は、規程第31条4の規定を実施するために必要な措置をとる。
2 裁判所長は、手続上の要件に合致する最も早い日に部を招集する。

第92条
1 部に係属する事件の書面手続は、各当事者の一通の訴答書面で行う。請求によって開始される訴訟においては、訴答書面は相次ぐ期限内に提出される。特別の合意の通告によって開始される手続においては、訴答書面は、当事者がそれらの訴答書面の相次ぐ提出について合意していない限り、同一の期限内に提出される。本項にいう期限は、部がすでに構成されている場合には当該部と協議して、裁判所又は裁判所が開廷中でないときは裁判所長が定める。
2 部は、それ以上の訴答書面が必要であることに当事者が合意し、又は部が職権により若しくは一方の当事者の請求によりその旨を決定した場合には、それらの提出を許可し又は指示することができる。
3 当事者が口頭手続を省略することに合意せず、かつ部が同意しない限り、口頭手続を行う。口頭手続が行われない場合にも、部は、当事者に対して口頭で情報を提供し又は説明を与えるように要請することができる。

第93条
 部の判決は、当該部の公開廷で朗読する。

第6節 判決、解釈及び再審

第1款 判決

第94条
1 裁判所は、評議を完了し、判決を採択したときは、当事者に判決を朗読する期日を通知する。
2 判決は、裁判所の公開廷で朗読され、朗読された日から当事者に対して拘束力を生ずる。

第95条
1 判決は、裁判所又は部のいずれが与えたかを明示し、次の事項を掲げる。
 判決を朗読した日付
 判決に参与した裁判官の氏名
 当事者名
 当事者の代理人、補佐人及び弁護人の氏名
 手続の概要
 当事者の申立
 事実の陳述
 法律上の理由
 判決主文
 費用に関する決定があった場合にはその決定
 多数を構成する裁判官の数及び氏名
 正文とされる判決文の指定
2 いずれの裁判官も、多数意見に反対であると否とを問わず、希望するときは、自己の個別の意見を判決に付すことができる。自己の理由を述べずに同意又は反対を記録する
ことを望む裁判官は、宣言の形式でそうすることができる。本項は裁判所の命令にも適用する。
3 正式に署名、捺印された判決の謄本の一通は、裁判所の記録に保管され、他の謄本は、各当事者に送付される。裁判所書記は、謄本を、(a)国際連合事務総長、(b)国際連合加盟国、及び(c)裁判所で裁判を受けることができるその他の国に送付するものとする。

第96条
 当事者の合意により、書面手続及び口頭手続が裁判所の2つの公用語のうちの1つで行われ、かつ規程第39条1に従って判決がその公用語で言い渡された場合には、その公用語の判決文を正文とする。

第97条 裁判所は、規程第64条に基づき、一方の当事者の費用の全部又は一部を他方の当事者が支払うべきことを決定した場合には、その決定を実施するために命令を発することができる。

第2款 判決の解釈又は再審の要請

第98条
1 判決の意義又は範囲について争いがある場合には、いずれの当事者も、原訴訟が請求によって開始されたか、特別の合意の通告によって開始されたかを問わず、その判決について解釈の要請を行うことができる。
2 判決の解釈の要請は、請求又は当事者間の特別の合意の通告によって行うことができる。この要請には、判決の意義または範囲に関する正確な争点を示されなければならない。
3 解釈の要請が請求によって行われる場合には、要請を行う当事者の主張は、その請求の中で述べるものとし、他方の当事者は、裁判所又は裁判所が開廷中でないときは裁判所長が定める期間内に、それについて書面で意見を提出することができる。
4 裁判所は、要請が請求によるか、特別の合意の通告によるかを問わず、必要な場合には当事者に対してさらに書面又は口頭で説明を行う機会を与えることができる。

第99条
1 判決の再審の要請は、規程第61条に定める条件を満たしていることを示すために必要な事項を掲げた請求の提起によって行う。援用書類は、請求に添付する。
2 他方の当事者は、裁判所又は裁判所が開廷中でないときは裁判所長が定める期限内に、請求の受理可能性に関し書面で意見を提出することができる。この意見は、請求を行った当事者に通知されなければならない。
3 裁判所は、請求の受理可能性について判決を与える前に、それについてさらに意見を提出する機会を当事者に与えることができる。
4 裁判所は、請求を認めるべきものと判断するときは、当事者の意見を確認した後に、請求の本案について必要と認めるその後の手続の期限を定める。
5 裁判所は、当該判決にあらかじめ従うことを条件に再審の手続を認めるものと決定した場合には、そのための命令を発する。

第100条
1 再審又は解釈されるべき判決が裁判所の言い渡したものである場合には、その再審又は解釈の要請は、裁判所が処理する。判決が部の言い渡したものである場合には、その再審又は解釈の要請は、当該部が処理する。
2 判決の解釈又は再審の要請に関する裁判所又は部の決定は、判決の形式で言い渡す。

第7節 当事者の修正提案

第101条
 事件の当事者は、本章に掲げる規定(第93条から第97条までの規定を除く。)に特別の修正又は追加を共同で提案することができる。裁判所又は部は、その事件の状況にかんがみて適当と認める場合には、その提案を認めることができる。

第4章 勧告的意見の手続

第102条
1 裁判所は、規程第65条に基づく勧告的意見の権限を行使するに当たっては、国際連合憲章第96条及び規程第4章の規定の外、この規則の本章の規定を適用する。
2 裁判所は、また適用することができると認める範囲内で、係争事件に適用する規程及びこの規則の規定に準拠するものとする。裁判所は、このため、勧告的意見の要請がとりわけ2以上の国の間で実際に係争中の法律問題に関係するものであるか否かを検討する。
3 2以上の国の間で実際に係争中の法律問題について勧告的意見が要請された場合には、規程第31条ならびに同条の適用に関するこの規則の規定を適用する。

第103条
 国際連合憲章により又は同憲章に従って勧告的意見を要請することを許された機関が、裁判所に対してその要請が緊急の回答を必要とするものであることを通知したとき、又は裁判所が速やかな回答が望ましいと認めるときは、裁判所は、手続を迅速に進めるためにあらゆる必要な措置をとり、かつこの要請について聴取及び評議を行うためにできる限り速やかに招集されるものとする。

第104条
 すべての勧告的意見の要請は、国際連合事務総長又は、場合によっては、要請することを許可された機関の行政職員の長によって裁判所に提出される。規程第65条2にいう書類は、要請と同時に又はその後できる限り速やかに、書記局が要求する数の謄本を添えて裁判所に提出されるものとする。

第105条
1 裁判所書記は、裁判所に提出される陳述書を、同様の陳述書をすでに提出しているすべての国及び機関に通知する。
2 裁判所又は裁判所が開廷中でないときは裁判所長は、
(a)規程第66条4に基づいて述べることが認められる見解を受理するための形式及び範囲を決定し、かつ書面によるこの見解が提出されるための期限を定める
(b)規程第66条の規定に基づいて陳述及び見解を裁判所に提出するための口頭手続を行うか否かを決定し、かつこの口頭手続の開始の期日を定める。

第106条
 裁判所又は裁判所が開廷中でないときは裁判所長は、陳述書および附属書類を、口頭手続の開始のときもしくはその後に、公開することを決定することができる。勧告的意見の要請が、2以上の国の間で実際に係争中の法律問題に関係するときは、これらの国の意見をまず確認しなければならない。

第107条
1 裁判所は、評議を完了し、かつ勧告的意見を採択したときは、意見を裁判所の公開廷で朗読する。
2 勧告的意見には次の事項を掲げる。
 勧告的意見を言い渡した日付
 参与した裁判官の氏名
 手続の概要
 事実の陳述
 法律上の理由
 裁判所に提出された問題に対する回答
 多数を構成する裁判官の数及び氏名
 正文とされる意見の指定
3 いずれの裁判官も、多数意見に反対であると否とを問わず、希望するときは、自己の個別の意見を勧告的意見に付すことができる。自己の理由を述べずに同意または反対を記録することを望む裁判官は、宣言の形式でそうすることができる。

第108条
 裁判所書記は、国際連合事務総長、及び適当な場合には、勧告的意見を要請した機関の行政職員の長に対して、意見の朗読が行われる公開廷の日時を通告する。裁判所書記は、また国際連合加盟国の代表、並びに直接に関係のあるその他の国、専門機関及び公的国際機関に対して通告する。

第109条
 正式に署名、捺印された勧告的意見の謄本一通は裁判所の記録に保管し、他の一通は国際連合事務総長に、適当な場合には、三通目を裁判所の意見を要請した機関の行政職員の長に送付する。裁判所書記は、謄本を国際連合加盟国、並びに直接に関係のあるその他の国、専門機関及び公的国際機関に送付するものとする。


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