刑事の判決謄本は被告人には送りません
とある(スポーツ)新聞を見ていたら……
「判決が被告のもとに送られてから2週間以内に控訴しないと確定する」
まあ,被告人が被告になってしまうのは
前にも取り上げたとおりなんだけど……。
刑事の判決はわざわざ被告人には送らないというのが第1。
控訴できるのは「判決宣告の日」から2週間以内というのが第2。
条文を確認しておくと
刑事裁判では被告人が出廷しないと開廷しないのが原則で
(刑事訴訟法286条)
出廷した被告人に対して法廷で直接判決を宣告するもので
(342条)
宣告が終われば,直ちに控訴できるんだから
(上訴の提起機関は,裁判が告知された日から進行する……358条)
373条による控訴提起期間14日も
判決宣告の日からという次第。
(ちなみに午前0時に宣告するわけじゃないので,
1日未満の端数はカットすることになり
翌日が1日目としてカウントする。)
このあたり
当事者が法廷にいなくても判決の言い渡しができ(民事訴訟法251条2項)
当事者の在廷のいかんにかかわらず判決書の送達が要求され(255条)
控訴が「判決書の送達日から」2週間とされる(285条)
民事裁判とはえらい違い。
※ちなみに,かつては民事は判決言渡前に判決書を用意しておき
それを朗読しなければならず,
その名残は今も民事訴訟法252条に残っているのに対し
(今は254条の例外ができたのだ)
刑事には判決書を事前に用意する必要もなく
実際「勧進帳」方式で,裁判官が法廷で必要事項を言っていくことでも全然かまわない
(どころか,むしろ原則それでしょという法の構造になっている)
という大きな違いもあった。
法廷であれだけ裁判官の説示を熱心に聞いていたんだからさ~
説示のしめくくりに言ったはずの
「なお,この判決に不服がある場合には,控訴の申立をすることができます。
控訴の申立をするには,東京高等裁判所あての控訴状を
この東京地方裁判所に提出してください。」
という決まり文句を言っているはずなんでね……。(刑事訴訟規則220条)
……東京って……。
ということで
相変わらずマスコミの裁判報道はひどいという話でした。
さて……
失火の責任に関する法律を研究しましょうか……。
(わからないならわからないでいい(c)by嘉穂)
……めがねっこしばり(ぼそ)……。
(わからないならわからないでいい(c)by嘉穂)
佐々木将人: 2016年6月2日 0時09分: 未分類: comment (0)