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棄権することと白紙で投票することと候補者名以外を書いて投票することと

まあ,来週衆議院議員選挙が行われるわけだけど,
毎度のことながら選挙について誤った知識の下に
いかがなものかって主張が現れるんで
ここで整理しておきたいと思ったわけさ。

1 選挙のやり直しを目指せるか?
立候補者がいて,それなりにそれぞれ票を得たにもかかわらず,
選挙がやり直しになる場合もあるにはある。
公職選挙法95条1項によって,
例えば衆議院議員選挙の小選挙区については,
「有効投票」の「最多数」を得た者が当選するわけだけど
但書で「有効投票」の6分の1以上の得票がなければならないって制限がある。
そうすると誰も有効投票の6分の1以上をとれなければ
「当選人なし」となって,選挙がやり直しになる。
逆に言えば有効投票数の6分の1をとった上で1位になれば当選するわけ。
この過程で「有効投票数を増やさない」という点においては
「そもそも投票に行かない」
「投票に行って候補者の氏名以外のことを書いて無効票にする」
「投票に行って何も書かないで無効票にする」
ことの差は全くないのです。
そして……法律上は要求されていないけど,たいていの候補者は選挙区内に住所を置いて
そこで投票するでしょ?
そうするとね……。
いくら選挙をやり直しに持ち込もうとして棄権や無効票投票を呼びかけたところで
当の立候補者は自分に入れるでしょ?
候補者が2人なら最低でも有効投票数2票,3人なら3票,4人なら4票,5人なら5票,6人なら6票。
これすべて(実は候補者11人まで)有効投票数の6分の1が1票だから
各候補者がすべて有効投票数の6分の1を得ていることになって
選挙のやり直しはなくなる。
この場合,全員1票で同率1位なら,くじ引き(95条2項)だからね。
候補者が12人以上になれば有効投票数の6分の1が2票になるから
本当に候補者だけが自分自身にしか入れないとなると選挙のやり直しになるけど……。
その可能性ってどのくらいあるだろう?
よって……
「棄権や無効票(白票も含む)によって選挙のやり直しを求めるのはまず無理」
と言えるわけ。

2 当選者の決定に際し,棄権や無効票が影響を与えることができるか
上で述べたとおり,有効投票数の6分の1を得た候補者の中で
有効投票の1位が当選するわけだから
有効投票数の6分の1を得た候補者が出てしまえば
当選人の決定過程で棄権や無効票はカウントされないってところまではわかってもらえると思う。
ところが……だ。
影響を与える与えないだと棄権や無効票は間接的な影響を与えてしまうのだ。
例えば候補者が2人しかいなくて,候補者以外の有権者が他に2人いて(=有権者総数4),
そのうちの1人があなただったとしよう。
他の3人が「候補者Aが2票,候補者Bが1票」という状態だった場合,
あなたの投票行動が
「Aへの投票」ならA3票,B1票でA当選
「Bへの投票」ならA2票,B2票でくじ引き
「棄権・無効票(白票含む)」ならA2票,B1票でA当選
ということになって
「多数派への有効投票」と「棄権・無効票(白票含む)」とに差がないことになるわけ。
これをさして「棄権や無効票(白票含む)は多数派への投票と同じ」と表現するんです。

3 無効票と白票は違う?
これは各市町村の選挙管理委員会による選挙結果を見てもらえればわかるけど
公式の結果としては区別されないのです。
当日の有権者数,各候補者の得票数,無効投票数は示されるんで
棄権と無効投票が区別されるってことは言えると思います。
ところが,無効票の中身について,公式な集計はされるとは限らないんですね。
無効投票の発生原因にはいくつかあります。
1つには余事記載系のもので,候補者の氏名は正確に書かれているけど,
余計なことを書いたので無効になるもの。
もう1つには誰に入れたかわからないから無効となるもの。
まあたいていどちらかですな。
もっとも誰にいれたかわからないの中には
「A,Bどちらに入れたか判別できないが,どちらかに入れたのは明らか」というものもあって
例えば氏が同じ候補者がいるのに氏しか書かない,名が同じ候補者がいるのに名しか書かない
そういうものは,最終的には他の有効投票数に比例配分することにしているので,
無効投票にはなりません。
(たまに得票数に小数点以下がつくのはこの比例配分のせい。)
話を元に戻すと,無効投票の発生原因はいくつかあるんだけど
それは公式集計の際に「無効投票」以上に分類して集計・公表されるとは限らないのです。

4 まとめ
以上見てきたとおりなので
棄権をしたり無効投票をしたりすることについて
自分なりの理由,ポリシーで行っている人がいると思うのですけど
その理由,ポリシーが
「少数派に投票することに比べ,多数派に投票したことと同じ意味になる」
という上でみたとおりの影響(結果)と一致しているかどうかは
きちんと考えないといかんのではないか……って思った次第なのでした。


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