たぶん全然調べてないんだろうな~
「社内メールを報道機関が報道するのは憲法21条2項後段(通信の秘密)違反」
「社内メールを報道機関が報道するのは著作権法18条1項前段(公表権)の侵害」
という言説が某所で流れていて
正直「全然調べてね~な~」ってため息が出た次第。
「社内メールを報道機関が報道するのは憲法21条2項後段(通信の秘密)違反」
なんだけど
憲法をちょっとでもかじったことのある人なら
「あれ?憲法って,権力をしばる法だから,権力以外を問題にしていいの?」
って原理原則論でひっかかって,おかしいな?って思う正解にたどりつけると思うし
ここでひっかからなかったとしても
「他人から得た情報が通信の存在と内容だからといって
その情報を広める行為まで通信の秘密の保障の対象なの?」
というあたりで,おかしいなって思う正解にたどりつけると思うのさ。
……で,ここで,「この発言者も憲法違反ってことだよね?おかしすぎる!」ってまで気づけば
だいぶ鋭い。
実は上記言説は一般論ではなくどこの報道機関のどんな行為か特定しているんで,
それを指摘している以上「通信の存在(内容も?)を広めている」んで
その言説自体もまた憲法違反に問わないといけないことになっちゃうけど
発言者はたぶん気づいていない。
ちなみに正解は
「社内メールについては会社がチェックしていいって判例があるから
通信の秘密の対象にはおおむねならない。」
ってところ。
「おおむね」って書いたのは,社内メールであっても
国家権力が調査するのは通信の秘密の保護の対象にはなり得るので
それを除外する趣旨。
もし全面的に通信の秘密が保障されるなら
通信の秘密は通信の発信者と受信者以外の者が調べてはならないって話で
会社のチェックが許されるって話にはなり得ないんで
むしろたいてい認めるって判決は
前提として「通信の秘密の問題ではないでしょ」を採用しているってわかるって次第。
加えて社内メールにおける私用メールは本来アウトだからね~。
(この点があとで利いてくる。)
次に
「社内メールを報道機関が報道するのは著作権法18条1項前段(公表権)の侵害」
なんだけど……。
詳細は
「演習2 電子メール公開の違法性?
ネットニュースで見知ったにすぎない人からもらったメールの公開」
のとおり。
ちなみにこのコンテンツを書いた後で私が見聞きした範囲では
手紙の著作物性の判断基準の枠組みを崩すような判例は出ていません。
そう!
著作権法の各種権利が発生するのは
「著作物」であることが大前提になるんだけど
手紙,メールはたいてい著作物性が否定されているんですよ。
|「普通の人が手紙の著作権を根拠にした裁判を起こしても0勝3敗」
|(中略)
|法律を勉強していない人がばくぜんと手紙の著作権と言ったところで
|およそ通るものではないってことは言えるのではないでしょうか。
って枠組みは変わってないんで
もう詳しい検討する気がないんであれば
「手紙・メールの著作権は原則不成立」
くらい言ってもいいかもしれないと思い始めている次第。
そして著作物性の判定基準を考えると
もっとおそろしいことになっちゃう次第。
|「著作物というためにはその表現自体に
| 何らかの著作者の独自の個性が現われていなくてはならないと解すべき」
という判例の基準からすれば
件のメールに著作物性が認められるようだと
「それって私用メールになってOUTでしょ」
ってことになりかねないのさ。
……ある種のひいきのひきたおし?
というので
詳しいことを知らなくても正解に行けそうな案件なのに
魅せられたように間違うって話でした。
佐々木将人: 2014年8月10日 1時43分: 未分類: comment (0)