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家主が破産したマンションの敷金

「賃貸マンションに住んでいて所有者である賃貸人に敷金を差し入れていましたが
 1年前にその所有者が破産しました。
 この度,競売によって新しい所有者が決まり
 新しい所有者と賃貸借契約を結び直しました。
 前の家主から敷金を取り返したいのですが
 どうしたらいいですか?」
……だめじゃん。

ちょっとこの案件,同時廃止には思えない。
おそらく管財人がついているんじゃないか。
管財人がついているのであれば,
第1にこの相談者が破産通知に同封された債権届出書を出していない可能性が高い。
もっとも破産法改正で債権届出をしなくていい場合ができたけど
そうであれば,そもそも配当が出せない「異時廃止」事案だ。
そして……競売になったということは
破産管財人が財団放棄したってことでしょ。
破産管財人が任意売却試みて
「抵当権者にも(おそらくは競売するよりも有利な)お金を渡して抵当権を消す。
 その際破産財団にも幾分か入れてもらう。」
ってことで破産財団を増やすことを考えるから
競売に行ったってことは前提は財団放棄したってことで
任意売却が失敗したってことなわけだ。

競売の性質は基本は「承継取得」ではなく「原始取得」と考えられている。
一般に賃借人のいる物件の売買は
単純な物件の所有権のみの売買ではなく
物件に付随した契約関係も込みでの売買だと解されるから
敷金返還義務についても新所有者に承継されるって理屈なんで
競売には適用されない。
競売の場合,新所有者に敷金返還義務は全くないわけだ。

そうなると旧所有者に請求するのであるが……。
破産しているんでしょ?
敷金返還請求権ってどう考えても破産債権だよね。
破産債権を破産手続進行中に破産手続外で回収しようとしたってそりゃあ無理じゃん。
破産者である旧所有権者には
「一部の債権者に有利・不利となる弁済を行った場合,免責不許可事由となる」って制裁があるから
絶対に弁済しないよね。
裁判で回収しようと思っても裁判は自動的に止まるし
強制執行だってできなくなる。
(まあ敷金に抵当権はつけないだろう……。)
破産手続が終わっていれば免責許可決定が早晩出るだろうし,
免責許可決定が出ればもう裁判で請求されることはあり得ないんだから
そんなのは払わないよね。
……てえかそんなのを払わなくてもいいようにするために免責を求めるんだし
  免責を求めるためには破産が要件だから仕方なく破産するんで。
しかも任意に払えば弁済自体は有効なんで非債弁済にならず債務がその分消滅するけど
下手打てば免責取消事由になるからなあ……。

だいたい責任のない債務の弁済を求めることが訴訟ではもはやできない以上
法的にできない請求をそれでも……ってえのがいかがなものか……なんだよなあ。


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