どこではまっちゃったんだろう?
「通貨偽造罪においても、偽札を偽札鑑定業者に鑑定能力の確認のため渡すこともあって、そのような、行使に当たらない用途の場面で「それは偽造通貨か否かを言っても始まらない。行使に当たる用途の場合にそれが偽造通貨か否かが構成要件として意味を持つ。」
……?
う~ん。法解釈論なのかしらん……。
刑法148条は
「行使の目的で
通用する貨幣,紙幣又は銀行券を
偽造し(中略)た者は
無期又は3年以上の懲役に処する。」
とあるんで
※一部方面ではあえて中略した所に例の話を思い浮かべてにやけているんだろうけど
本論ではないのでここでは省略(笑)
これの構成要件としては
1 通用する貨幣・紙幣・銀行券を偽造すること
に加えて
2 その偽造行為が行使の目的であること
が要求されるわけだ。
で,この構成要件は1と2がand条件ね。
(ちなみに1の中の貨幣,紙幣,銀行券はor条件,その全体と「通用する」がand条件)
犯罪成立要件は「構成要件該当性」「違法性」「責任」の順に検討し
構成要件該当性が否定されれば
違法性や責任については検討しないで犯罪不成立としちゃってよい。
同様に構成要件該当性の審査の時に
and条件であれば
1つでも否定されれば全体が否定されるんだから
とりあえず1つ否定できれば
残りは「検討しないで」犯罪不成立としちゃってよい。
で,実際,偽札鑑定業者に鑑定能力確認のために渡すために通貨っぽいものを偽造する行為は犯罪不成立なのだが
これはもっぱら「行使の目的」がないことによるわけさ。
この場合にもしかしたら
「それが通用する貨幣・紙幣・銀行券にあたるか否かにかかわらず
行使の目的がない以上
およそ通貨偽造罪は成立しない」
と書いている文献はあるかもしれない。
しかしその文献を根拠に上記の主張をするのは
「え?」
と思っちゃう。
……なんで自ら迷路にはまりこんでいくかなあ……。
通用する貨幣・紙幣・銀行券にあたらなければ
行使の目的の有無にかかわらず
通貨偽造罪は成立しないわけだが
そのことをもって
「偽造通貨に当たらない場面でそれが行使の目的なのか否かを言っても始まらない。偽造通貨に当たる場合に行使にあたるか否かが構成要件として意味を持つ。」
って言っちゃうのはね……「え?」だよね。
……じゃあ「構成要件として意味をもつ・もたない」の意味ってえか判断基準は何?
and条件で「構成要件該当性」「違法性」「責任」のように検討する順位が決まっているものならともかく
構成要件該当性の内部のand条件はたいてい順位なんてなくて
少なくとも通貨偽造罪の偽造通貨性と行使目的には順位がないのに
順位をつけることで
何か解釈上便利な点ってあるのかしらん。
「行使の目的の有無」と「偽造通貨か否か」という独立して検討できる問題をミックスして混乱する不利益以上に
利益な点が見当たらないのだ。
佐々木将人: 2011年9月20日 1時16分: 未分類: comment (0)