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日本の訴訟における請求放棄と訴の取下の違い

前提としては
請求放棄も訴の取下も訴訟を終了させる効果がある点で共通する一方
請求放棄は
「自分の請求に理由がないことを認める」ことなので同じ訴訟を再度提起することができないのに対し
訴の取下は単にこれ以上の訴訟の進行を望まないということなので
同じ訴訟を再度提起することができるという違いがある。

なもんで請求放棄の場合には,相手である被告の同意は一切不要。
ところが訴の取下の場合は,多くの場合で被告の同意が必要ということになるわけ。

これを理解するためには「請求棄却判決が確定した場合の効力」をおさえておかないといけない。
たとえば「100万円支払え……との判決を求める」訴訟において
原告の請求を棄却する判決が出て確定したとしよう。
そうするとこの判決は「原告が言っていた100万円の請求権なるものは存在しないことを確認する」意味があり
同じ裁判は二度と起こせなくなるわけだ。
(とはいえ,通説判例は二度目を起こしても請求棄却判決を出すのが相当としているが
 この点は本題ではないので省略。
 またうるさく言えば訴訟物の特定だって必要だけどそれだって本題じゃないので省略。)
なもんで場合によっては被告でも「請求棄却判決をとっておく」メリットがある場合があるんで
被告が裁判におつきあいした場合(まあざっくりした表現だが)には訴取下に同意が必要であり
もし同意しなければ判決が出るまで裁判は続くことになるわけだ。

となると……
被告が裁判におつきあいしちゃった場合
それ以後にすぐにでも訴訟を終わらせたければ
(相手が訴の取下に同意してくれない限り)
請求放棄するしかないという話になる次第。

もっともこれが1審で請求棄却判決が出て控訴した場合には
請求放棄の他に「控訴の取下げ」という目もあり得る。
請求放棄との違いは結構細かい話になるんだけど
控訴の取下げによって1審判決が確定することになるんで
「原告が言っていた100万円の請求権なるものは存在しないことを確認する」
こととなり,
その基準点は一審の口頭弁論終結日となる。
一方請求放棄だと
「原告が言っていた100万円の請求権なるものは存在しないことを自ら認める」
こととなり,
その基準点は請求放棄の日となる。
基準点の違いはともかく,どんな内容について二度と裁判を起こせなくなるかと言えば
「原告が言っていた100万円の請求権」についての裁判である点は一緒なわけだ。
となると法的効果がほぼ一緒とは言える次第。


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