法は事実か?
バイト先での話
「日本の民事訴訟において条例って主張立証の対象になるんですか?」
……ふぉっ,ふぉっ,ふぉっ。なかなかよい質問である!
私の専攻と言ってもいいくらい大得意の話。
……って顔したら,「しまった!寝た子起こした!」って表情を質問者はしていたけどね。
結論から書けば
「裁判所は法を知る(jura novit curia)の原則」から
知っているものを主張立証する必要はないということになる。
弁論主義の適用はない。」
ということになる。
ちなみにこれを「当事者による証明を要しない事実」として説明している本もあるけど
ぎりぎり言うと論理的な明晰さに欠けると思う。
そもそも法が事実かどうか(特に外国法について)争いがあって
「法は事実ではない」とする立場からは
「そもそも事実じゃないんだから証明を要しない事実というくくりは変」ってことになるし
おそらくそういうことを言いたくてそういう説明をしているんじゃないんだろうから
触れない方がかえって明晰。
とはいえ実務では
外国法や条例(その自治体内でのみ有効)
もしくは特殊な法律(業界内にしか知られていないのが通例)については
当事者が書いてくるのがほとんど。
そしておそらく反対側に意見聞く。
でもこれを誤解しちゃいけないのが
別に弁論主義によって当事者の主張立証がなければ
裁判の資料にできないとか
認否をとって場合によっては証拠調べしなきゃいけないとか
……という理由からではないってことな点。
概念的には「裁判所は法を知る」と言ったところで
全ての裁判官が全ての法を現に知っているかといえばそれはさすがに無理。
そうすると,「裁判所は法を知る」ってところにあくらをかいて何も手を打たないと
その法の存在を知らないまま裁判されちゃうことがある。
これが事実審なら上訴理由にはなるから控訴すればいいかもしれないけど
そんな危険は犯さないのが冴えたやり方だよね……ってレベルの話なわけさ。
でも……前にも書いたけど
「法は事実だ」とした方が楽な場合ってあるよね~。
まあこんな話なわけだが……。
「条例」で質問してきたのに「国際私法」とかの本で答えるあたりが……(笑)
……いや,民事訴訟法関係では渉外事件でもない限りあまり深刻な問題にならないので
あまり突っ込んで議論する実益がないもんだから
詳細に記述している本がなかなかないのよ。
(2011年10月12日 23時22分)
佐々木 将人: 2015年4月15日 0時18分: 未分類: comment (0)