入国と上陸
実は昨日の話に根底ではつながっている話。
入国審査という言葉に代表されるように「入国」という言葉は普通に使われるし
おそらくは入国と関連させることはないと思うけど「上陸」という言葉自体も普通に使われる。
で,外国人の出入国について規制している出入国管理及び難民認定法では
「入国」と「上陸」とを使い分けているという話。
法律自体にはこんなことは書いていないんだけど
「外国人は常に船でやってくる」ということを想定している法律だということをわかっていると
用語法とかシステムが見えやすいと思う。
日本の場合,現状においては,陸地上で他国と接しているという国境は存在しない。
したがって「外国人は常に船でやってくる」という前提をおくと
それが公海からか他国領海からかは別として
外国人はまず船で日本の領海に入るわけだ。
この日本の領海に入ることを「入国」と出入国管理及び難民認定法では言っている次第。
これに対し,その船が日本の港に着いて,日本の陸地に上がること
これを「入国」と区別して「上陸」と呼んでいる。
だから,出入国管理及び難民認定法の上陸のことを「入国」と呼んでいる人がいれば
こと法律に関する限り誤解のもとなのでやめた方がいいということになる。
では,なぜこのような使い分けをしているかということだけど
その最大の理由は
「長大な領海の境界線上で入国審査を行うことなど不可能だし
国際法上,「入国をさせなければならない」場合があるのだから
やったところで効果的な審査にはなり得ない」
という点だったりする。
「入国をさせなければならない」というものの典型例は
沿岸国には一切立ち寄らない無害通航権の行使の場合なわけだ。
(これは昨日書いた話)
実際このことを受けて出入国管理及び難民認定法3条1項は
「(有効な)パスポートを持っていない外国人は入国できない」
「上陸許可を受けないで上陸するつもりの外国人は入国できない。」
という規制をかけているんだけど
逆に言うと,この2つのどちらにも当たらなければ
入国自体を日本国の法令に違反しているとすることはできないのです。
これに対し,上陸については原則(入国審査官の)許可が必要なんだけど
この許可も14条から18条までの特例があることに注意が必要な次第。
「入国」と「上陸」
法律の議論をする時には
「この入国or上陸は出入国管理及び難民認定法でいうところの入国or上陸なんだろうか?」
というチェックが必要だというお話。
(2014年11月9日 17時07分)
佐々木 将人: 2015年4月15日 0時36分: 未分類: comment (0)