理論的にはきれいじゃないんだけど
お題は司法試験2011年国際関係法(公法系)第1問の設問1
解説しているのがロースクールでも教えている先生なので
私ごときがこんなこと書くのもどうか……と思うんだけど……。
ある特定の国際法規範の国内裁判所における適用の可否を論ずるにあたり
・その国家における国際法の国内における効力(変型か受容か)を論じて
・受容となった場合に自動執行力を持つか否かを検討する
というのは国際法的にきわめて正しいし理論的にもきれいだとは思うのよ。
でもね……。
国際法の国内における効力という1行問題ならこれでいいと思うんだけど
問題文はあくまで
「甲の代理人は,Y国の裁判所に甲の釈放を求めることを考えた。
そこで,国際法上の主張をするためにはどのような議論をする必要があるかについて説明しなさい。」
なんだよね。
そうするとね……
実務的な感覚からすれば
まずまっさきに検討すべきなのは
「そのような主張を認める直截な規定の有無」であり
それがあればそれによっちゃうのがまずセオリーだと思うのよ。
国際私法のネタに「裁判管轄と準拠法は違う」ってえのがあるやん。
日本の裁判所が裁判をそもそも行えるかという議論と
日本の裁判所が裁判を行える場合に,日本の裁判所がどこの法を適用するかは
そりゃあ話が別だ。
で,法の適用に関する通則法のたとえば7条によれば
法律行為の成立や効力については
法律行為の当時に選択した地の法によるとされるから
たとえばロンドンで成立した法律行為については
日本の裁判所に管轄が認められた場合でも
日本の裁判所が適用すべき法はイングランド法になるでしょ。
この場合に,イングランド法が日本において効力を持つか持たないかを
一般論として議論することに
(学術的に体系化する意味は認めるとしても,それ以外の)
意味がどれだけあるんだろうか?ってならない?
「裁判で何を主張しなければならないか?」
という問いに対しては
まず法の適用に関する通則法の7条の適用があるかどうか論じ
あれば裁判で主張できるんだからそれで議論終了じゃん。
これと同じことが「条約を国内裁判で主張の根拠にする時」にも言えないかい?って話。
まずまっさきに検討すべきなのは
当該条項を国内裁判所において根拠に用いることを許す直截な規定の有無じゃないかと思うのさ。
そしてそれがないとなってはじめて
一般論として国際法の国内における効力……って行くんじゃないか……と。
この話が司法試験の国際関係法(公法系)で出題されていることに鑑み
問題文の「国際法上の主張をするためにはどのような議論をする必要があるか」には
国内法に特別な規定がある場合は当然すぎるから除かれるというのがお約束なのだというならわからないではない。
そうは言ってもそういう国内法の実例がレアケースなんだよというのであれば
へ~と思いつつも,まあ,いっかで通しちゃう。
さらにあたしの言っているとおりなんだけど
試験対策としてはそこまでは不要なんだというのであったら
「参りました!」
なんだ。
だけどな~。
実は解説書いた先生は
問題文のなお書き
「なお,従来Y国国内裁判所において自由権規約が援用されたことはない。」
の意味・位置づけを「迷うだろう」としつつ
日本のような受容方式をとりつつ国際法の適用に不慣れで
国内法の適用だけで同じ結論を出すことを想定して処理したんだけど
あたしに言わせればこれは端的に
「先例があれば先例こそが適用・不適用の根拠になってしまい
問題が成立しなくなってしまう」
ことを防ぐための
なくてもはなから全部書けば問題がないけど
問題文をよく読んで意味を理解した結果,問題が成立しない可能性まで読めてしまう受験生に
「それは違うからね」とつぶしておく
典型的ななお書きだったんじゃないかと思っているわけさ。
じゃあここでいう「はなから全部」とは何かと言えば
1行問題と答が変わらないような答を求めているのではなく
(新)司法試験らしく,裁判の場を想定した思考による答を求めているんじゃないか。
そうすると……私の方があっているような気がしてならないのだ。
……まあ,あたしが問題解説の先生つかまえて「違うんじゃないの」って思ってしまう時点で
勉強足りないんじゃないかって言われると
一般論として「全くそのとおりでございます」なわけなんだけどね。
(2013年7月24日 0時07分)
佐々木 将人: 2015年4月15日 0時30分: 未分類: comment (0)